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五話「ミケラの日 07」

「あんた達、お昼までまだ時間があるから外で遊んで来なさい」

 ロレッタがミケラ達を追い出しにかかる。

「え~っ、わたしお母さんと一緒にいたい」

 ミケラが案の定ごねてタマンサにしがみつく。

「わたしもミケラと一緒にお母さんといる」

 サクラーノも一緒になってタマンサにしがみついた。

「ふふ~ん、残るってことはわたしのお昼を作るのを手伝いたいってことね」

 ロレッタが意地悪く笑った。

「わたし、遊びに行く」

 途端にミケラはタマンサから離れて、立ち上がった。

「サクラーノ、遊びに行こう」

 サクラーノの手を引っ張る。

「なんで、お母さんといるんじゃないの?」

 サクラーノがミケラの豹変ぶりに目を白黒させる。

 サクラーノのタレントは猪突猛進、6歳にして本気で体当たりをすれば大人数人を吹き飛ばす威力の持ち主だったが、性格の方も一直線で融通が利かないのだった。

 事細かくきちんと説明して納得させないで手伝わせ、サクラーノが暴走して台所が大惨事になったこと数知れず。

 ミケラはサクラーノと一緒にロレッタの料理の手伝いをして、何度もサクラーノの暴走に巻き込まれ痛い目に遭ってきたのだ。

「マオちゃんも行こう」

 ミケラはマオの手も引っ張る。

「予も良いのか?」

 確かに倉庫の女将にはミケラと遊んでこいと倉庫を追い出されてきたが、仕事を放り出して本当に遊んでいいものか迷っていたのだ。

「じゃあ、わたしも遊びに行く」

 マオの迷いを断ち切ったのはサクラーノだった。

 マオとミケラの手をがっちり掴むと、6歳と思えない力強さで走り出したのである。

「いってきま~~す」

 ミケラは慣れたものでサクラーノに引きずられるのに任せ、

「うおっ、あわわわわ」

 マオはいきなりのことに引きずれながら慌てふためく。

「いってらっしゃぁぁぁぁい」

 ロレッタは走り出したサクラーノ達を見送ると、

「よっしゃぁぁ!作戦成功」

 ガッツポーズをする。

 いつもはお昼は作り置きして仕事に出かけるのだが、今日はミケラと帰ってくるのが判っていたのでお昼は作っていない。

 急なお客のマオも増えたのでサクラーノに邪魔をされたくなかったのだ。

「よっしゃぁぁ!って、あなたも女の子なんだからもう少しおしとやかにしなさいよね。お嫁のもらい手がなくなるわよ」

 とタマンサに釘を刺されたが、

「えへへへ」

と笑ってごまかす。


 サクラーノはミケラとマオを引きずりながら、子供達の遊び場になっている空き地を目指す。

「おっ、向こうから来るのサクラーノじゃないか」

「ほんとうだ、サクラーノだ」

 子供達がめざとくサクラーノを見つけた。

「ミケラだ、ミケラも一緒だ」

 ミケラがサクラーノに引きずられているのを見つけた子供が嬉しそうな声を上げた。

「ミケラだって、じゃあ今日はミケラの日か」

 普段はミケラを呼ぶ時は様を付けないと両親や周りの大人から怒られるのだが、様を付けなくても怒られない日がある。

 それはミケラがサクラーノの家に帰った時、その日を子供達は「ミケラの日」と呼んでいたのだ。

 ミケラの日は子供達がミケラと気兼ねなく遊ぶことが出来る日なのである。

 それに歓迎される理由がもう一つあった。

 ミケラとサクラーノの二人が揃うと、いつも以上に元気が出るので遊びも盛り上がって楽しめるのだ。

 サクラーノだけでもミケラだけでもダメ、二人揃った時が最高なのであった。

 今日はいっぱい遊べるぞと子供達は大歓迎で二人を迎える。

「あれ?サクラーノが引っ張ってるもう一人って、予じゃね?」

 サクラーノがもう一人引っ張っているのが、マオであることを気がついた子供が居た。

 予と聞いて子供達の視線が、一斉にサクラーノの引っ張っているもう一人の方を向く。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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