五話「ミケラの日 06」
「そうだ母さん、倉庫の女将さんからこれもらった」
ロレッタが甘い香りのする袋をタマンサに見せた。
「突然、予を呼び出してその袋を渡すなりミケラと遊んでこいと、倉庫を追い出されたのじゃ」
「あらまあ、女将さんらしいわね」
マオの話を聞いてタマンサはクスッと笑う。
その笑顔を見てマオは納得した。
「おぬしは本当にミケラの母親じゃのう」
闇に身体を蝕まれ苦しいはずなのに他人の心配をし、他人の幸せを心の底から喜べる、ミケラの根底に流れている物をマオはタマンサから感じ取ったのだ。
「あらありがとう、ミケラもサクラーノも自慢の私の娘よ」
タマンサはニコニコ笑う。
「母さん、私は?」
ロレッタが聞いてくる。
「あなたもよ、ロレッタには本当に感謝しているのよ」
「えへへへ」
母親に面と向かって感謝していると言われ、ロレッタは照れ笑いをする。
「ところでトランスロットは?」
ロレッタが聞く。
「お兄ちゃんならお母さんの用事で出かけてるよ」
サクラーノが返事をした。
「でも、もう帰ってきてもいい頃なのに。ミケラが帰ってくるのをもの凄く楽しみしていたのに、変ね?」
タマンサが首を傾げる。
「お兄ちゃん頼りないから」
「うん、お兄ちゃん頼りない」
サクラーノとミケラが「頼りない」を連呼する。
「これ、おやめなさい。確かにトランスロットは頼りないところもあるけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんで一生懸命頑張っているんだから」
タマンサがミケラとサクラーノを注意する。
「は~~~い」
二人は素直に返事をして、「頼りない」と言うのを止めた。
だが、それをトランスロットは家の外で聞いていたのだ。
「母さんありがとう」
涙があふれそうになるのをぐっと堪える。
「やっぱ俺、頼りないかな?」
6歳の妹二人に「頼りない」を連呼されたことが胸にグサッと刺さっていたのだ。
目の前が少しにじむ。
目に溜まった物がこぼれないように空を見上げる。
雲一つ無い青い空がどこまでも続いていた。
「空、青いな」
目の端からしずくが頬を伝わって落ちた。
堪えていた物があふれ出す。
トランスロットは涙を拭うと、
「青い空なんてだいっきらだぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
そう叫びながら街の方へと走っていった。
頑張れトランスロット、いつか君の時代が来る。
その時代が来ると信じて走り続けるのだトランスロット。
嗚呼トランスロット、君はどこへ行く・・・・・・
トランスロットくん、超久しぶりの登場です。
作者の自分も忘れていて設定を読み返したくらいですから\(^o^)/
ミケラもお母さんのところに帰ってきて甘えん坊に戻れてよかった。
実はミケラは超甘えん坊のお母さん子なので、これからそんな描写も増やしていきたいです。
サクラーノ共々よろしくお願いします。
近況報告
エアコン、不調です。
スイッチ切った後に動くかどうかはエアコン様の気分次第。
我慢できるときはいいけど、室温30度超えて動かないと地獄です。
夜涼しくなったので、網戸にして氷枕でなんとか寝てますが。
早く涼しくなってほしい。