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1話「泉の妖精 その10」

 チャトーラとチャトーミが疾走する。

 ロープは瞬く間にピーンと張り、二人の動きが止まった。

「踏ん張れチャトーミ!」

「判ってる兄ちゃん!」

 二人はこれでもかと踏ん張ってロープを引いた。

「ぬおおおおおぉぉぉぉ!」

「うりゃあああぁぁぁぁ!」

 二人があらん限りの力でロープを引っ張りると、ゆっくりととげが抜け始め、遂にとげが完全に抜けた。

 ありったけの力で引っ張っていたチャトーラとチャトーミは、そのままゴロゴロと地面を転がり最後は二人とも大の字になって止まる。

「やったなチャトーミ」

「やったね兄ちゃん」

 チャトーラとチャトーミは地面に大の字になったまま笑った。



「あれ?あれあれ?」

 足に刺さって痛かったとげの感触が突然無くなったので、空中でうずくまっていたドラゴンが驚いて首を上げる。

「足に刺さっていたとげを、姫さん達が抜いてくれたんだ」

 ミミがミケラ達の方を指差す。

「あの人達が」

「そうじゃん、あたい達も助けられたじゃん。お礼に行くじゃん」

「は、はい」

 妖精達に連れられてドラゴンがやって来た。

「妖精さん達に聞いたのですがとげを抜いて頂いたそうで、ありがとうございます」

 ドラゴンはミケラ達に丁寧に頭を下げる。

「ドラゴンさん、痛いの無くなって良かったね」

 ミケラは無邪気に喜ぶ。

「よう大将、もうあんまり手間掛けさせんなよ」

 と言いながらチャトーラは腰をさすり、

「そうだよ、兄ちゃんと二人エラい目に遭ったんだから」

 チャトーミは服に付いたほこりを払う。

「すみません、すみません」

 ドラゴンはペコペコと謝る。

「拙者は姫の願いを叶えただけ」

 虎次郎はそれだけ言うとミケラの横に立つ。

「あんたの御陰で凄い迷惑だったゲコ、妖精さん達にも迷惑掛けたゲコ」

 大ガエルに妖精達に迷惑を掛けたと聞いて、ドラゴンが固まる。

「覚悟は出来てるよね?」

「たっぷりとお仕置きじゃん」

「四・露・死・苦」

 妖精達がボキボキと指を鳴らし、ドラゴンの顔がみるみる青ざめていく。

「ドラゴンさんをいじめちゃダメ」

 ミケラがドラゴンをかばって妖精達の前に立ちはだかる。

「ちっ、姫さんに言われちゃしょうがないな」

「命拾いしたじゃん」

「四露死苦」

 妖精達は素直に引き下がっていった。

「お姫様、また助けて貰ってありがとうございます」

 ドラゴンは再びペコペコと頭を下げる。

「図体でかいくせに、情けない奴だな」

「よ、よく言われます」

 ドラゴンは頭を搔きながら照れ笑いをする。

「まっ、これで終わったわけだ。姫様、お城に帰ろうぜ」

「うん」

「旦那、悪いけど姫様を抱えて歩いてくんな。ゆっくりしていると日が暮れちまう」

「承知」

 虎次郎はミケラを抱え上げる。

「ドラゴンさん、バイバイ」

 ミケラは虎次郎に抱え上げながらドラゴンに向かって両手で手を振った。

「姫様、皆さんさようなら」

 ドラゴンもミケラ達一行の姿が見えなくなるまで手を振り続ける。

「はぁぁ」

 ミケラ達の姿が見えなくなるとドラゴンが溜息をついた。

「どうしたゲコ?」

 大ガエルがドラゴンの方を見上げると、

「可愛い」

 とドラゴンは頬をポッと染める。

 これが城下を震撼させた事件の始まりだとは、当のドラゴンさえ知る故も無かった。

著作権表記追加                       (Copyright2021-© 入沙界 南兎)


2024/09/24 一部修正



                     (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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