第3-3話 初級術師、美少女ふたりにシェアされる
簡単なまとめ:
エーテルの精霊であるエーテルちゃんと”エーテル”を作ろうとしたら、なぜか素足でお尻を踏まれてぐりぐりされました。
この弾力が気持ち良いですが、この湧き上がる感情は何ですか?
更に同棲している彼女(超誇大表現)に見られました。
ぼく、大ピンチ!
ポゥは裏口のドアを開けたまま、唖然とした顔で固まっている。
……これも修羅場というのだろうか。
こういうとき、どんな顔をすればいいか分からないの……笑えばいいと思うよ。
「い、いや! これは違うんだポゥ! これには深い事情がッ!」
結局出てきたのは、浮気現場を見られた男達が有史以来100万回くらいは繰り返したであろう言葉だった。
リビングの床にうつぶせになり、少女に素足でお尻を踏まれている状況……なにが”違う”のか、僕にもさっぱり分からないが、こういう時にはひとまず謝罪が重要である。
僕はうつぶせの状態から器用に身体を動かすと、速やかに土下座姿勢に移行する。
むにっ
エーテルちゃんの足裏が滑り、そのまま僕の後頭部を踏みつける形になる。
……大変結構な土下座モードが完成したと思う。
ころん……
その姿勢変更に合わせ、さらに1つのエーテルが生成された。
「あ、あ、あ、アナタ! まさかエーテルちゃんっ!? なんでここにっ!?」
「にしし、そういうアンタはポーションじゃん! ちーっす!」
「100年ぶりくらい? 元気してた?」
……あれ?
予想と違う反応……エーテルちゃんが足をどけてくれたので、ようやく僕は顔を上げることが出来た。
朱色の髪のポーション少女と、青髪のエーテル少女がお互いに指を突き付けながら言葉の応酬を繰り広げている。
「エーテルちゃん! いつの間にアナタ実体化してたの? 一体どうやって?」
「へへ、そこのグラスにちょっとな」
「グラスぅ? まさか……キスしたの?」
あわわ、急に矛先が僕の方に……!
「ご、ごめんっ! 骨董市でその子が封じられていたオーブから声が聞こえてさ……なんか僕も気になって、思わず……」
しどろもどろに弁解する僕……く、苦しい言い訳だ。
「う~、もう!」
「……でも、エーテルちゃんの声まで聞こえて……”ふたりも実体化させる”なんて……グラスの力ってもしかして思ったより物凄い?」
「へへっ……そうね~アタシの記憶でもこれ、有史以来初めてじゃね? すごっ!」
ふたりの議論は僕の力のことになったらしく……どうやらポゥとエーテルちゃん両方を実体化させたことは、物凄い偉業みたいなのだが……。
僕はただ玉にキスしただけなんですが……褒められるのが申し訳ない……。
「にひひ……アンタ達ここで回復アイテムの店をやってんのな!」
「き~めた! アタシもここに住んで一緒に手伝ってやんよ! エーテルとハイポーション売ってる店とかスゴイっしょ?」
「えーっ!? エーテルちゃん! なに勝手なこと言ってるの!」
「グラスはわたしのなんだから!」
「へへーっ! アイテムの精霊はいったん”契約”すると、その人間の元から離れられないじゃん?」
「ポーションも知ってるっしょ?」
「ぐぬぬ……」
「じゃ、じゃあ! グラスの唇はわたしのモノね!」
「お尻はエーテルちゃんに譲ってあげるっ!」
「おっけい! 契約成立ね!」
……父さん母さん、いつの間にか僕の唇とお尻が美少女たちの間でシェアされることになったようです。
ぼ、僕の意見が入る余地は……?
どこか満足げな表情をするふたりを見ると、これはこれでいいかとあきらめてしまう僕なのでした。
*** ***
「……なるほど……アイテム名呼びだと混乱するから、名前をくれるのか」
「アタシが”エル”で、こっちが”ポゥ”か……おっけ、覚えた!」
「にしし……結構名前のセンスいいじゃん、グラス!」
にっこりと笑ったエルが、僕の脇腹をツンツンしてくる。
ここは僕の家のリビング。
食事と入浴を終えた僕たちは、お互いの事と、”グラスとポゥの快復ストア”の事をエルに説明していた。
エルは頭がよく、いちどの説明で全部理解してくれたようだ。
「ふひぃ……それにしてもヒトガタは良いね! 飯も美味くて最高だよ!」
エルはTシャツにショートパンツという、ポゥと同じ部屋着に着替えている。
すらりと伸びた脚線美がまぶしい。
とりあえず、エルはポゥの隣の部屋に住むことになった。
この家、父さんが副業で冒険者の宿をやっていた影響で、小部屋だけで7つもあり、同居人が増えるのは問題ないのだが……。
僕のむらむらが耐えきれるだろうか……と言いつつこちらから手を出す勇気のない18歳男子なのでもんもんするだけですが。
「というか、エルごはん食べ過ぎっ! 食材の買い出し大変なんだよっ!」
「ええ~、つーかポゥもめっちゃ食ってたじゃん……」
「わたしはご飯のおかわり、10杯で我慢したの! エルは12杯も食べてたじゃない!」
……はい、僕から見たら大差ないです!
グラス家はエンゲル係数極大な家になりそうだった。
「……ふう、色々あって疲れちゃった!」
「えへへ、明日の仕込みをして、もう寝ようか」
一通りエルときゃいきゃい騒いで満足したのか、ポゥが頬を染めながら僕の隣に移動してくる。
”仕込み”……別にえっちな意味じゃないですよ?
いやまあ、彼女とチュッチュするんですが……。
「……グラス……んっ」
ちゅっ
ポゥの柔らかな唇が僕のそれに重なる……ああ、何度してもこの瞬間は幸せだなぁ……僕が人生の幸福を噛みしめていると……。
「おお~う、はじめてんねっ! じゃ、アタシも……」
むにっ、むにむにっ!
!! エルの柔らかな足裏が僕のお尻と肩をむにむにと……ああああああっ!
ころころころん
かつっ……かつん
「きゅう」
唇とお尻と肩から伝わる甘美な感触に、僕はたくさんのハイポーションとエーテルを生み出しながら目を回すのでした。
……うう、いろんな意味で体がもつかな?
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