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第11-3話 このままじゃ間に合わない? そのとき……

 

 すううううっっ……


 地上である王都から降りてきた”黒い霧”が巨大なモノリスに吸い込まれる……。



 パアアアアアッッ……

 ズズズズズズズ……



 黒い霧が消えた瞬間、呼応するようにモノリスが振動し、表面に刻まれた紋様が妖しく紫色に発光する。


 数十メートルの高さがあるモノリスにびっしりと描かれたそれは、すでに8割以上が紫色に染まっていた。



「くふふ……なんとか間に合いそうねぇ……」


 王都の大深度地下にある太古の遺跡に籠り、大魔王様復活の準備を始めて数か月。


 ”カオスヒールの夜”現象を利用した生命エネルギーの吸収、それだけではなく温泉の地脈にあふれる回復エネルギー、各ダンジョンに残る回復エネルギーなどをかき集め、大魔王様復活に必要なエネルギーは着々と集まってきている。


 本当は、グラスとか言う小僧が実体化させた”アイテムの精霊”達を使えばもっと早かったのだが……グラスのXXヒールは厄介だし、勇者アロイスのパーティもいる。


 時間はかかるが、リスクを冒す必要はないとレイラは判断していた。



 そういえば最近もう一人、アイテムの精霊が実体化し、ここの場所を嗅ぎつけたらしいが……どんなに急いでも人間どもの力ではここまで穴を掘るのに半年……。


 こちらはあと2か月余りで必要なエネルギーを確保できるのだ。



 この勝負、勝った!

 憧れの大魔王様と世界を統べる光景を思い浮かべ、魔族レイラは恍惚とした笑みを浮かべるのだった。



 ***  ***


 ゴゴゴゴゴ……


「わわっ……また地震だよぉ」


 低い地鳴りのような音と共に建物が揺れる。

 怖がって抱きついてきたポゥの頭を優しくなでてやる。


 幸い、陳列台の商品が落ちるほどじゃないんだけど……。


 ここ1か月くらい、王都はしばしば謎の地震に襲われていた。

 揺れはさほど大きくないので、実際に被害が起きているわけじゃないけど、徐々に頻度が上がっていくそれは、王都に住む人々の不安を煽るのに十分だった。



「ちっ……これだけ揺らされると、いらいらすんな!」


「う~ん、王都郊外の温泉は、完全に枯れちゃったらしいわよ~」


「不安を和らげるラベンダー系のアロマオイルの売れ行きが好調といっても、これでは喜べませんわね……」


 エルたちも、もどかしそうな様子だ。


 僕たちのスキルは、けが人や”黒い霧”に侵された人たちを癒すことは出来るけど、地下迷宮で何かしらの陰謀を進める魔族レイラに手を出すことが出来ない……。


 じりじりとした焦りを僕たちは感じていた。


 シャロンさんの話では、地下に渦巻く闇の魔法力が徐々に大きくなっており、そんなに猶予は無いかもしれないとのことだったが……。


 とりあえず、みんなのためにケーキでも焼くか……こういう時にはスイーツだ!

 気を取り直した僕がキッチンに向かおうとした時……。



 ヴィイイイイインンッ……

 ドンッ!



 空気が震え、窓ガラスを揺らすと、やけに重い音が天井から響いた。


 これは、2階か?

 何があったのだろうか……慌てて2階の空き部屋に走った僕たちが見た物は……。



「虹色オレンジの……オーブ?」


 キラキラと七色に光る、一抱えほどもあるオレンジ色のオーブだった。


[さあ! 精霊の実体化職人グラスさん! 私にキスするのです!!]


 案の定、僕の頭の中に声が響く。


 精霊の実体化職人って……良く通るハキハキとした声だが……言い方がやけに俗っぽいぞ。



「リーゼ、これってまさか?」


「おいおい、マジか~?」


「このオレンジと七色の輝きは……”エナジーオーブ”?」


「そんな、”エナジーオーブ”、復活していたと言いますのっ!?」


 ポゥたちが背後で驚愕している。

 これは、今回も試してみるしかなさそうだ……。


 僕はそっと虹色のオーブに唇を近づけると……。


 ちゅっ


 もう何度目かも分からない、オーブへの口づけを行うのでした。



 パアアアアアアアッ!



 その瞬間、七色の光が部屋に満ち溢れ……。



「ふう、ようやく実体化できましたね……私はエナジーオーブの精霊です。 よろしくお願いします!」


「グラス! アイテムの精霊たち、よく聞いて! このままでは、魔王が復活して世界は滅びます!」



「「「「「な、なんだって~!?」」」」」


 実体化するなり、驚愕の事実を素早く話してくれる”エナジーオーブ”?の精霊。


 どうやら、やけに話が早い彼女が僕たちの仲間に加わることになりそうだった。


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