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第1-3話 【パーティ転落サイド】迷宮でポーションが取れなくなりさっそく詰む

 

「今日のクエストは迷宮探索か……ふむ、罠はない……もうこちらに来ていいぞ、ルード」


 通路の安全性を確認し、パーティの武闘家兼シーフであるダレルが声を掛ける。


 ここは王都近郊に広がる山脈。

 ”迷宮山脈”の通称で呼ばれる、広大なフィールドである。


 通称に恥じず、無数の迷宮が口を開けており、冒険者たちの格好の稼ぎ場となっていた。


 今日彼らが挑むのはB-221迷宮(あまりに迷宮の数が多いので、迷宮のランクに数字を組み合わせた形式で呼ばれる)、彼らのパーティレベルからすると少し簡単かちょうどいい狩場となる、Bランク迷宮である。


「それにしてもルード、回復術師無しで探索に来てよかったのか?」


 まだ迷宮は2階層……最深部までは遠い……俺たちのレベルでは心配ないと思うが……多少気づかわしげにダレルが首をかしげる。


「はん、グラスの事かよ! あんなクソザコ回復術師、いてもいなくても同じだぜ!」


 そう、最下級回復術師グラスの野郎の事だ……アイツ、今朝いきなり”パーティ脱退届”を出してきやがった。


 ”冒険者パーティ”は、パーティのメンバー、レベル等を冒険者ギルドに登録することが義務付けられている。


 これは、冒険者ブームによる無秩序な冒険者の増加を食い止める意味と、一時期激増した、”冒険者に憧れる下級スキル持ちを採用し、使い捨て同然に酷使した後追放する”という、非人道的な扱いを防ぐための措置である。


 そのため、冒険者パーティへの加入と脱退には届け出と認可が費用なのだが……。


「むしろ助かったぜ……”パーティ都合”でメンバーを脱退させると、手当金を払う必要があるからな……」


 ”自己都合脱退”ならその必要はない……くくく、俺にも運が回ってきやがったぜ……不要メンバーをタダで処分出来た挙句、優秀な回復術師を予約できたのだから。


 ルードは楽しげに笑う。


 ”自己都合脱退”でメンバーが抜けた場合、同一職のメンバーを優先的に補充できる……その規定のおかげで来週からギルドに加入する予定の、上級回復術師(レベル40)を予約できたのだ。


「それに、ポーションとハイポーションはたくさん持ってきたし、大丈夫だろ」


「ポーション類はドロップアイテムとしてたくさん出て来るしな」


「魔法使いの専業メンバーも増えたし……」


 ルードは満足げに道具袋の中を確認すると、ちらりとパーティ最後尾にいる女魔法使いを見やる。


「…………」


 すっぽりとフードをかぶり、足元まであるローブで全身を覆った黒髪の陰気な女だ。


 パーティに加入してからまともにしゃべるところを見たことが無いが、まあどうでもいい。

 レベルは35と、腕は確かだ。


 こいつも、たまたま今朝ギルドに顔を出したときに”空いて”いたので、確保したのだ。


 くく、持つべきものはギルド支部長となった俺の友人ブライアンだぜ……。


 ともかく、これに上級回復術師が加われば、俺のパーティは攻守とも最強になる!


 Sランクや……SSランクパーティへの昇格も見えてきたぜ!!


 ルードは意気揚々と迷宮の奥へと進むのだった。



 ***  ***



「ちっ……なんだよこの迷宮、めんどくせぇ!」



 1時間後、ルード達は苛立っていた。


 思ったよりモンスターが強く、10~50程度の小ダメージが蓄積していくのだ。


 それに、嫌がらせのようなダメージトラップがあり、1~5くらいのかすり傷も蓄積していく。



「うう、痛いっす!」


 ガード兼戦士のジョンが悲鳴を上げる。



「しかたねぇ、”ハイポーション”を使え!」


「サンキューっす! ルード!」


 たまらず、回復アイテムの使用を指示するルード。


「まずいな……これで10個目か……」


 軽微なダメージの蓄積のため、回復アイテムを使うタイミングが難しい。


 ハイポーションは高価なので、できれば使いたくないが……迷宮のお宝がカスだと赤字になるぞこれは……。


 ルードは早くも焦りを感じていた。



「くそ……これだけカスダメを食らってはな……」


 ダレルもいら立ちを隠せない……そういえばグラスの奴は俺たちがカスダメを食らうと、すぐにDヒールで治療していた。


 そのため、ハイポーションなどの大回復アイテムをボス戦に温存できていたのだが……あのクソ野郎、Dヒールしか使えないくせに、MPだけは膨大だったからな……。


 実は見えないところで貢献していたグラスの役割に気づいても、今や後の祭りである。


 ”自己都合脱退”したメンバーの()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。



 ***  ***



「くそう! おかしいぞ! なんでこんなに”ポーション”も”ハイポーション”もドロップしねえんだよ!!」


 ここは迷宮の最深部。

 迷宮ボスを目の前にして、いら立ちが最高潮に達したルードは、壁を殴りつけながら叫んでいた。


 確かにおかしい……ダレルも同じことを感じていた。


 通常なら2~3体に1体の割合でモンスターからドロップする”ポーション類”……それがこの迷宮に入ってから数十回は繰り返した戦闘でドロップしたのはわずかに2つ……通常ならあり得ない確率である……なにか、不思議な現象が起きたのだろうか?


「畜生……もう手持ちのポーション、ハイポーションを全部使っちまった……2万センド以上の大赤字だぞこれは……」


 流石にこのままボスに突っ込むほどルードも愚かではない……(2万の赤字だと迷宮のお宝を入れても黒字になるかは怪しいが)


「くそおおおお! 街に戻るぞお前ら!!」


 悔しげなルードの絶叫が迷宮に響いた。


次話ではグラスのお店、開店です!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ポーションちゃんが可愛いですね! とにかくキャラの可愛さ全振りって感じですが、それがまた良い…! これからどんな子が出てくるのか楽しみです! [一言] いわゆるテンプレ物ですが、センスが光…
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