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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
95/144

レモン

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

        ※


 樫木は今回のクエストにリオナを連れてきていなかった。

 リオナは癒しの力があるって言ってたのに、なんで?

 僕は思う。


 僕が不思議そうに見ていたのがわかったのか、樫木は軽く笑った。

「なんでリオナがいないのかって?」

「うん」

「だって危険なところに女の子連れて来れんし」


 僕や和木まで積極的に声かけるクエストだったから、薄々感じてはいたよ。

 しかも高額賞金が出て多くのパーティが参加してたから。

 やっぱ、危険なんだね。このミッション。


 うなだれながら、この際聞いてみた。

 最近じゃいつもリオナが樫木の横にべったりくっついていたから、本音を聞くことができなかったんだ。


「樫木さ、リオナとできてるの?」

 僕の質問に、樫木はあんぐりと口を開けた。

 聞いた僕の方が恥ずかしくなって、うつむいてしまう。

「だって同じ部屋で寝てるし……。なんか二人で微妙な空気漂わせてるから!」


「んなわけないだろ!」

 全力で樫木に否定された。

「和木君だってそう思ってたよね?」

 多数決で攻めるわけじゃないけど、和木に同意を求めると、「そうだな」と一票得た。


 樫木が顔を真っ赤にして、クエスト前なのに声を大にした。

「和木とリオナ一緒にしてみろよ、リオナが和木に夢中になって和木が振って険悪になるだろ? 森とリオナ一緒にしたら、森なんか安まらなさそうだし。わいの気遣いわからん?」


 それは、できていないけれど、僕と和木とをリオナと同室にするわけにいかないから、必然的にそうなったと?


「でもさ、樫木君は女の子好きだって知ってるけど、リオナには特別な気がするんだ」

 素直な意見を僕は言ってやった。


 はぁぁぁ。

 樫木が虚脱感を表すために、大きなため息をついて、ヤンキー座りになる。

「ちゃうよ。リオナは怖がりだし、なかなか俺たちに馴染まなさそうだったから、いちお、お前達にも気を使いながらも、リオナにも安心感与えたかったていうか」


 そんな言い訳を僕は聞く気はなかった。

 僕は名探偵○○ンなみに推理を口にする。

「でもさ、和木くんは、言ったよね?」


 北斗の○史郎なみの決め台詞で、『俺リオナ、守れればもうそれでいい』って。


 ごめん、「お前はもう死んでいる」レベルと同一化して。僕の社会性の低さは、重々承知しているので許して。


「それはさ……。俺たちがバスで死んで、この世界に異世界転生する前、俺が婚約者を傷つけてしまったから、せめてこの世界で誰か一人でも女の子幸せにしたいって思ったからで、リオナとできてるわけじゃない」

 樫木が過去を語るなんて今までなかった。


 婚約者なんて今時時代錯誤な、と思うけれど。

 樫木の家が神社だと知って、なくはないのかと考えてみる。


「婚約者ってどんな人?」

「ちょっとリオナに似てるんだよ。親が勝手に決めた相手だからって、俺、幼馴染なのに彼女を傷つけて遠避けて、そんなまま死んじまったんだけど、親に反発しながらも、こうなってわかるんな」

 好きだった。

 取り返せない過去。

 死んだってことは、現実世界で俺たちはその過去を上書きできない。


「後悔してる」

「わかるよ」

「わかる」

 樫木の言葉に、僕とワギはまたしてもハモった。


 異世界転生する前に、こんなにも後悔することがあった。伝えたい言葉が、思いが、各々にあったんだなって、死んでからわかるんだ。


 なんで今、今をもっと悔いがないように生きられなかったのかな。

 人って、寿命何年とか見えるシステムが開発された方が、悔いなく生きられる気がする。


「茜に会いたいよ」

 樫木は一言だけ言って、クエスト前にうつむいた。

「夢ならば、覚めてほしいよな、早く」


 僕はあえて厳しいことを言葉にした。

「夢じゃない」


「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月10日


サブタイトル、今回やばい。

ヨネズファンに土下座かな。

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