大きな実家
気ままに投稿しています。
季節がいいので、本当に高野山を自転車で走りたいな。
※
神社だと聞いていたから、想像はしていたけど、樫木家のスケールのデカさは想像以上だった。
「林だな」
大鳥居をくぐって参道を進む。
鳥居ってのは、聖域と俗界を隔てる門のようなもので、鳥居の向こうには神様がいるとされている。
玉砂利が敷き詰められた参道を、自転車を降りて押しながら行ったので、進んでも進んでも、なかなか社にも家に辿りつかなかった。
「裏側からは車乗り入れられるようになってるくらいだから、やっぱり広いよね」
「昼ごはん食べた腹ごなしにはちょうどいい」
アイとコウは森林浴をしながら、辺りをキョロキョロ見渡して前に進んだ。
社務所に来て欲しいと待ち合わせ場所を指定されていたから、神社の案内板を見ながら進んでいく。
マップによると本殿、拝殿、神楽殿、宝物殿と、広い境内の中には沢山の社殿がある、格式高い神社だった。
「ここは何の神様なんだろうね?」
「間違っても学問の神様じゃなさそう」
樫木のキャラから想像したのか、自分でそう言ったコウはプッと吹き出した。
「火柱神社っていうくらいだから、火の神様なんじゃない?」
「それって結構珍しい神社だよね」
「自然を祀る神社って、アニミズムって言ってかなり歴史ある古い神社なんだって」
へえ、とコウは感心したように言った。
「姉貴と信仰なんて縁遠そうなのによく知ってるね」
「ビックデータ収集のために調べたのよ」
おっしゃる通り、信仰への興味はイチミクロもない。
ひたすらコウのチームメイトのデータを正確に集めるために、いろんなことを調べて、データを収集している。
でも人間性だけはね。
暮らしてきたところや、関わってきた人のことを知らないと、データ化なんてできない。
実際にこうして足を使って、彼らが暮らしてきたところを見て、肌で感じ取って。
ーーそれでも正確に再現できるかどうかなんて、わからないんだ。
だから頑張らないと。
アイはコウに自転車の交換を要求した。
「電動機付き自転車は重い。そっちの軽い方、私がつくわ」
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月10日