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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
89/144

気分転換

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

       ※


 コウのクロスバイクのドリンクホルダーを外して、そこに電動アシストを設置した。

 見た目はお世辞にもスマートではないけれど、機能が高ければそれでいい。


 アイはジャージにスニーカー姿でそれに跨った。

 ちなみにお尻が痛くならないように、サドルにクッションを固定する。

「よしこれで完璧」

「うわっ、ダサ。ほんとにそれで行くの? 姉貴は電車とゴンドラでくればいいのに」

「そんなわけには行かないわよ」


 これだけ用意したのだ。

 樫木と一緒に登る約束をしていたというコウに、付き合う覚悟はできていた。


 世界遺産、高野山。

 1200年前に弘法大師・空海が開山した真言密教の聖地。

 高野山全域を「総本山金剛峯寺」とし、特に「奥之院」と「壇上伽藍」は2大聖地として信仰を集めている。


 またサイクルロードとしても有名で山岳に沿ってつづら折の坂が続き、それを登ることを楽しみにする、自転車乗りがよく訪れるところだ。

 少し汗ばむぐらいの気候で、森林浴は気持ちいいはずだった。


 樫木の家は、金剛峯寺のメイン通り奥の「紀伊山地の霊場と参詣道」として、高野山、熊野、吉野地域とともに世界遺産に登録されている由緒ある神社だという。


 樫木の友人だというと、神主である樫木の父は快く会ってくれることになっていた。


 電動アシストの力を存分に発揮し、アイは高野山登山をなんなく制覇した。

 頂上付近まで来ると、コウの方がバテていたくらいだ。


「せこっ!」

 文句を言うコウを横目に、アイは優しく微笑んだ。

「ダサくても、涼しい顔で登れる方がいいでしょ?」

「いや、それ絶対帰り落車するパターンだから」

 ぜいぜい言いながらついてくる弟よりも先に、アイは金剛峯寺の正門をくぐった。


 土産物屋や飲食店などが軒を連ねるようになって、観光地に来たなという感じがした。


「子供の時に来て以来だね」

「あの時は親父の車で来たから、1時間半くらいでついたけどなぁ」

 朝早くに出発したのに、時間は正午を過ぎようとしていた。


「どっかでお昼食べてから、行こう。運動してお腹すいた」

 そういうとコウは白い目で自分を見る。

「それほぼ原付使用でしょ? 普通の電動機付き自転車って、電動がペダル回すアシストするんだけど、姉貴のは電動が主で、おまけでペダルが回ってるように見えたけど」

 バレていたか。


「しかもさ、途中焼いた餅売ってて、それ何個も食ってたのに、お腹すいたの?」

 うるさいな。

「高野山のガイドブックに載ってたの。焼き餅が有名だって。あと高野豆腐」

 ここのところ気が沈むことばっかりだったのだ。

 一緒に旅行気分で観光したっていいじゃない。


「ああ。でも一緒に来てくれてよかった」

 コウが笑った。

「いい天気だ」

「そうだね」

 久しぶりに弟の満面の笑顔を見た。


「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月9日

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