にぶちんめ!
気ままに投稿しています。
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和木ヨースケの家は、アイにとっても衝撃的だった。
弟コウへの気持ちが、写真以上のもので溢れ出ていて、ビックデータ化するに至って、なんだか迷うところが多かった。
和木って高校一年生の男の子が、興味を持ってきた分野はわかる。
でもそれ以上の気持ちを、確かに感じ取ってしまったら?
写真を見た時、バスケのチーム全体の写真じゃなく、弟のコウとツーショットで笑うそれを見てしまった時、姉としては複雑な気分になってしまった。
彼は弟のコウを好きだったーー?
実はさ、和歌山ってまぁまぁそっちの、ーー性と性が入り混じった人間も多いってこと、アイは統計的に認識している。
人間愛とかの以上の部分で、相手に焦がれることがあってもいい。
アイは新しく開発されるメカ類に焦がれるから、夢中になるってことに理解があった。
夢中ってね。
寝ても覚めても、なんだかそのコト考えてしまうこと。
人でも物でもそれは一緒。
神案件なんだから、それでいい。
だから身近にそんなのがあっても、いやまぁ、それもいいかって思っていた。
でもコウ、お前さ、ほんと何も知らないにも程がある。
お前の周りややこしすぎるだろ。
いつの間にお前は人の気持ちを虜にするの!?
なんでお前だけ、いつも天使の羽全開で癒し系になってる!?
アイは鈍感すぎる弟の天使ぶりに、頭を抱えた。
和木を幼馴染として認識してきたコウを責める気にはならない。
大人は友人関係にうるさい。
それは付き合う友人によって、子供の人生が左右されることを、身をもって知っているからだ。
だから一流大学、大手企業を目指せという。
さもなくば、受け継いだ家業をそのまま継がせろという。
大人は傷を背負っている分、保守的なんだな、とアイは思っていた。
でも、おそらく和木は少し違う気持ちで、コウに依存していたに違いない。
それは母親に求めるみたいな、揺るぎないもの。
コウの天然振りに、和木が惹かれた。
こんな感情をわからないくらい天真爛漫な弟のコウは、アイにとっても眩しかった。
自分にとってコウが、どんなに出来が悪くてもかけがえのない存在だったように、和木にとってもコウは生きていくための光だった。
過ぎたことだから、もういいけど。
和木ヨースケの冥福を祈りながら、弟のコウを罪作りなやつだと、それもデータ化しながら冷めた気持ちで締め上げた。
「次は樫木君の家に行かないとね」
鈍感やろー。
アイは弟の尻をつねってやった。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月7日
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なんでもいいです。