寿命は何年くらい必要ですか?
気ままに投稿しています。
映画見にきて、食事処で時間待ちに書いています。
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陰陽師、樫木アキの実家は高野山の、ある有名な神社だった。
和歌山の高野山って言ったら世界遺産だし観光地、
それから修行僧もいっぱいいるし、それ以上に観光客もいる。
明治以前は高野山全体を総本山金剛峯寺と言って、
1200年の歴史がある。標高867メートルの位置にあり、
参拝に訪れる客は、ロープーウェイを使ったり、車を使ったり、
べダル好きはロードバイクでクライムしたりするような場所だ。
樫木がロードバイク趣味って言ってたのがわかるような気がする。
「黒田と高野山をペダルで登る約束してたんだけどな」
あいつ、生きてるかな?
樫木は寂しそうだった。
「きっと黒田君なら大丈夫だよ」
そうでないと、和木が一番悲しむよ。
「もしかしたら、今もあっちの世界でバスケやってるかもしれない」
この世界で彼の姿は見ていない。
バスの中にも居なかったんだ。
僕らはそう思うことにした。
「俺さ、クエストで出会ったやつに聞いたんだけど、
この世界じゃ術士って言うんだって。
あと術士は試験があって、試験を受けると級をもらえるらしい。
そのランクによってクエスト賞金も違うみたいなんだ」
「すごいね、じゃあそれ受けた方がいいんだ」
「まあな、こんな世界に来てまで試験あるなんて、かったるいけど……。
受けなきゃな、って思ってる。
ただ試験会場が別の神様の氏族のところだから、
ここからは遠いし、試験もそんな簡単じゃないみたい。」
だから当分はこっちに居て、クエストでお金を貯めるらしい。
「それがいいね」
僕は言った。
慣れるまでは何が起こるかわからないから、生活基盤を整えてから、
この世界をもっと知ってから動く方が安全だ。
この頃は和木もこの世界の植物の研究を始めていたし、
僕は僕で、鉄を作り出す準備を8割完成させている。
最初は本当にどうなることかと思っていたけれど、
神様は、ーーいやリーインリーズ伯爵はいい人だった。
ただ入れていたのは市民権の申請である。
一般の人間が神の一族、重氏族って言うんだそうだけど、
そこで市民権を得るためには、寿命の壁を越えなければならなかった。
「せめて100年以上生きないとな」
リーインリーズで300歳だそうだが、全くそうは見えない。
若くて綺麗、お肌ピチピチだ。
僕ら100歳まで、頑張ったら生きれるかもしれないけど、
たぶんヨボヨボだよな。
そんなんでいいのかな?
それともこっちの世は年取らないのかな?
そう考えて、僕はゾッとした。
僕は永遠の命なんていらない。
ちゃんと年取って、死にたいよ。
「和木君、長生きしたい?」
「死んだ人間にそれ聞くか?」
「じゃなくて、こっちの世界で寿命長い方がいい?」
和木はちょっと考えていたが、その横から樫木が言った。
「俺は長い方がいいよ。仙人みたいに徳をつめるし」
和木も言った。
「そうだな、俺も自分を試せる時間が多い方がいい」
んー。ここでは、アンチが僕だけか。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月6日