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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
85/144

どれだけ俺が好きだよ!?

気ままに投稿しています。

結構書いたかも。

キャラも育ってきた。


お付き合いよろしくお願いします。

        ※


 表向き華道の家元、裏側は和木組という893の複雑な家の中に、

アイはコウを連れて上がり込んだ。


 庭先のハウスで再会した兄妹は、長い空白を埋めるのにさほどの時間はかからず、すっかり打ち解けた様子だ。


 純和風の玄関は、今時珍しい土間である。

 古民家のようでいて、建物自体はかなり新しい。

 40畳ほどある畳座敷に上がると、立派な欄間らんまの装飾が目に飛び込んできた。


「ひろっ!」

 コウは心なしか驚いている。そして言った。

「僕が前に来たとき、和木はここじゃないところを案内してくれたんだけど」

「ああ」

 タクミがうなづく。


「ヨースケは離れでくらしていたから、本家の西側に案内されたんだろう。後で行ってみよう」

 でもその前に、とタクミは二段になっている刀掛けから、一本の刀を手に取った。


「わぁ、懐かしい!」

 ルイはタクミからそれを受け取り、頬ずりしそうな勢いで目を輝かせる。

「実家にこんなものがあったから、私のコレクター壁が形成されたのよね」

 ルイは笑った。


「実はヨースケも、刀というか刃物全般が大好きでね。

華道を教えるにあたって、よく切れる鋏を与えてやったら、その切れ味が気に入って、

最終的に刀の魅力にハマったらしい」


「足利家の宝刀ね」

 ルイが言うと、タクミがうなづいた。

「二本そろってたんだけど、この一本を、泊まりに行くときは常に持ち歩いていた」


 物騒だぁ。

 アイは、いつも目が座っているヨースケを思い出し身震いした。

 特に自分を見るときは、毛虫を見るような物凄い嫌悪感を感じていた。

 コウは小さい時から物怖じしない子だったけど、こんな世界で生きてきたヨースケと幼馴染として付き合ってきたとは、本当に驚かされる。


「そういえば、いっつも布に入れた長い棒きれ担いでたな。竹刀かと思ってたけど、本物だったんだ」

 呑気者め。

 もしお母さんだったら、息子心配して完全に絶縁させてたかもだよ。

 アイは苦笑いする。


 まあ自分は、弟の人間関係に口出すのは、弟がおかしくなった時だけと決めている。

 付き合う連中が悪くても、コウがコウのままなら、それはそれでいい。

 893と付き合ってもコウが変わらないのなら、そしてずっと付き合っていたなら、和木はそう悪い人間じゃなかったと言うことだ。


「ヨースケはあんまり自分の事や家の事に、他人を入れたりしない子だったんだけど、

うちに来たことがあるってことは、君はヨースケにとってずいぶん特別だったんだな」

「幼馴染で、親友でした。――おっしゃるとおり、秘密主義であんまり自分の事話したがらなかったから、よくわからない部分も多いんですけど」

「それは君に迷惑をかけないようにだと思う。好き嫌いがはっきりして、……いたから」


 過去形になってしまうのが寂しい。

 ここにいる全員の胸がぎゅっと痛むのが伝わってくる。


「この子達がいうには、二人は仲良くどこかで生きているらしいわ。おかしいわね、従弟同士でこの世では関わり薄かったのに、今一緒にいるんだもん」

「ああ。悲惨な事故だったけど、なんとなく深いつながりは感じる」

 タクミは和木が暮らしていた別棟に案内した。


「昔からあの子は草花が好きな子でね。ハウスで育つ植物だけじゃなく、離れにはありとあらゆる種類の草花を植えて育てていた」

 離れの裏庭を見せてもらって、アイはため息をついた。


 そこは植物の宝庫だった。

 よく知っているハーブ類だけではなく、薬草から山菜、山野草、野草、樹木が種類豊富に手入れされて、並んでいる。

 おそらく日向とか日陰になる場所も、

計算づくで育てているようで、すべての草花が青々と育っている。


「まめだったんですね」

「日頃愛想のないやつだったが、長く家を空けるときは、必ず私に代わりに世話を頼んできた」


 離れの家の中に入ると、植物に関するありとあらゆる資料が並んでいた。

 森もオタクだと思ったが、和木も違った意味のオタクだった。

 整然と整えられた書物と、乾かした薬草。

 調味料のようなものも揃っている。


「もしかすると料理も好きだったんですか?」

 合宿中、調理班を森と一緒にやっていたのを思い出して、アイは質問した。

 アイも日常料理をしている。

 整然と整えられた調味料と料理器具、おそらくスパイス等は自作していたのだろう。

 すごい種類だ。料理の本も相当量あるようだ。


「外食は嫌いだったからな。私が本家に居ないときは、こっちの棟で一人でご飯を作って食べていたようだ。早くに母親を亡くしたし、兄弟もいなかったから、気が付いたら無口で引きこもりがちになってたよ」

「お母様がなくなったのは、5歳くらいだったんですよね? その頃ちょうど僕は彼と出会ったから、記憶にあります」


 コウの記憶の中の和木は、社会的な関わりを極力嫌うような人柄だった。

 タイプは全然違うけど、やっぱり森と少し似ていた。


 ここでもまた、アイは和木の部屋を観察して、和木の読んでいた本や趣向を探る。

 驚いたのは勉強机の上には、中学のときのコウの写真があったことだ。

 バスケのユニフォーム姿で二人で映った写真が、写真立てに飾られている。


 コウはそれを手に取って、「おまえどんだけ俺好きだよ」と涙ぐんだ。

「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月5日


キャラって自然と育つものですね。


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