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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
83/144

はははは(笑)

気ままに投稿しています。


お付き合いよろしくお願いします。

       ※


 樫木のプロフィールに付け加えるとしたら、

樫木の家は高野山の神社らしい。


 ツンツンに尖らせた硬い髪の毛からは全く想像がつかない、ご実家だった。


「陰陽師って知ってるよね?」

 現代社会じゃ、実際にそんな物表に出て来るとすれば、

ドラマやアニメ、胡散臭いテレビ番組くらいのものだった。


「ちっちゃい時から俺、そう言うことを生業にしてきたんだ」

 樫木は言った。


 僕は眼鏡が、ずり落ちそうになるのを直しながら、

何の冗談かと汗を拭う。


「陰陽師って、あの呪術使って悪霊退散とかする、あの類のやつ?」

「専門は方位学と天文学による占術。退魔行なんかも習うけど、そんなのは現代社会じゃめっきり少なくなってるし、案件があったとしても秘密事項だ」


 誰だ?

 樫木を普通っていった僕!

 全然普通じゃない。


「神主で陰陽師なの?」

 バスケ好きの、ロードバイク好きの、

女の子大好きな今時の子じゃないの!?

 樫木のイメージ、一番神社をイメージしにくくて、僕は悩んだ。


「生まれるとこって選べないやん。俺の親父は坊主だし、その家の長男として育ったから、小さいころから、そっちの教育受けて、高野山高校に最初進学したんだけどさ。ちょっと反発したくなっちまって、一人暮らししてインハイ目指すって決めたのよ」

 死んだけどね、と樫木は軽く笑った。


「ごめんロードバイクとかバスケと、家業が全然結びつかない」

「それで言ったら、お前の親父がエロ系小説家ってのピンとこないのと同じだけど」

 ああ、納得。


 おっしゃる通り、子供って親選んで生まれてきてないもんね。

 生まれ落ちる家庭環境なんて、ルーレットみたいなもんだから、

不公平なようで、宝くじ当てるような公平性もある。

 どんな環境でも、順応できるもん勝ちだよな。


「で、本題なんだけど。森って、ほんと見えてないよな」

 ごめん、眼鏡かけても視力0.5ないよ。

「眼鏡の度が合ってないのはわかってる」

 和木と樫木が同時に顔を見合わせて、ぶんぶんと揃えて顔の前で手を振る。


「じゃなくてさ。クエストで結構森はひどい目に遭ってるよね」

「うん」

「でも全部自然現象だって思ってるよね?」

「そうだよ、運悪いなって思うけど」

 僕の目の前で、二人がため息をつく。


「な、やっぱ天然で見えないんだって」

「あんなリアルに見えるものが見えない!?」

「だってクエストってそんな危なくないね、普通じゃんって初日からボケたこと言ってたし」

「ああ、な。その方が森らしくて幸せかもしれなくね?」


 なんか疎外感がすごい。

「そこまで言ったら、とりあえず全部聞かせてくれる?」

 モヤッとするし。

 僕は問い直した。


 言いにくそうに咳払いして、和木が言う。

「俺たちがこの世界に来て、お前はたぶん見えてないものが多い」

 それって、何?

 僕が首を捻ると、和木に代わって樫木が言った。


「この世界は呪術で溢れてる。日本の現代社会にいたときに、夢物語のように映画やアニメで語られてたもの、ここでは当たり前なんだ。呪術者がいて、精霊がいて、妖精やゴブリンがいる。もちろん人間もいて、神と言われる人もいる」

 僕の嗜好が停止したのは言うまでもない。


「リーインリーズ伯爵は、すでに300年生きている。そしてキコアイン一族の総帥と言われる人は、800年生きているんだ。うちらの生きてきた寿命って、せいぜい、金銀で有名になった婆様でも100年とちょっとだろ?」


 二人から聞かされた内容を整理するには、相当脳に皺を寄らせたと思う。使っていなかった部分の想像力を引き出し、新しい皺を作らなきゃ、僕には到底理解できない内容だった。


「異世界に来たって自覚あるから」

 僕はやっとそれを口に出した。異世界に来たことを大前提として仮定したとき、全ては天の(神の)采配になる。


「僕は見えない?」

 不可思議なことに盲目である自分を確かめる。

「うん。妖精も見えないし、僕たちがクエストで戦っている妖魔やゴブリン、そんなもの全部見えてなくて、ただ不運だって思ってる。現代の日本の社会にいたときみたいに」


 樫木のクエストで賞金を得るって意味を僕はわかっていなかった。

 単なる依頼を受けて、それをこなすってことぐらいにしか認識がなかった。


 和木は「それでいいんじゃない」と言った。

「俺は見えるけど、それで森が森らしいなら、それが森の現実だから。

ーー悪くないと思う」

 なんか僕だけ前のステージに置いて行かれた気分にはなったけど、

僕は科学者になりたい男だ。


「ごめん。事情はわかった。

でも僕、自分が目にして、自分が体験したことじゃないと認めない」

 断言した。


 思わず二人が拍手喝采する。

「科学は呪術を必ず凌駕する!」

 二人は、ははははと笑いながら、「だといいけどな」と言った。

「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月4日


異世界転生したら、どんな感じ?

を追求したいです。

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