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「樫木って普通じゃない?」
ふと口に出した言葉を、僕は後に、めちゃくちゃ後悔することになる。
車輪のためのゴム素材を準備して欲しいと言われ、
あんまり知らない、異世界人リオナに迎合する樫木、インハイまで気にして転校してきたはずなのにあっさりとバスケから興味を無くした樫木に、僕は鼻白んだ。
「お前、クエストに出たらまぁまぁ怪我してるよな」
和木が言った。
「ごめん。このへん、地形が優しくないからね。整備されてない道じゃ、つまづいたり、こけて頭打ったりしても、まあ当たり前かって」
「それだけじゃないと思う……」
そのとき和木は何も言わなかった。
僕らは素材集めのために、できる限り樫木の請け負ったクエストに参加した。
思っていたより閉鎖された空間でクエストが行われたから、僕は舗装されていない道につまづいたり、いきなり吹いた強風に視界を奪われたり、散々な目に遭って、ため息をついた。
ある日なんて、踏んだり蹴ったりだった。
いきなり水を被ったかと思うと、10メートルくらいの穴に落ちた。
ずいぶん運が悪い1日だったが、現実社会でも、そんな日はある。
ハマったところから抜け出そうと、僕は泥だらけになったけれど、めげずに立ち上がった。
「なんで素材集めに、こんだけ時間かかるし、厳しいんだよ」
山の斜面から火が吹くこともあり、僕達はその熱を防ぐために、退避した。
昔、鉱山とか言って素材集めした人、毒食らって死んでたから、そんなこともあるんかな?
カナリアとか鳥が死なないかとかで確かめてたし、
素材集めも、大変なんだよな。
勝手に理解して、納得していた。
でもある日、樫木と和木が僕に言った。
「やっぱこいつ、クエストわかってないよね?」
樫木が和木に言って、和木は「さぁな」と笑った。
そして和木は僕に言う。
「森、今百人のゴブリンがお前の横で戦ってたら、おまえどうすんの?」
「え?」
ゴブリンって、有名なファンタジーの?
アルゴリ○とか、妖精のピッぺ○とか出てた指輪追いかける、古典的ファンタジーのあれ?
「馬鹿か! あれは映画だから。
それができる根拠、僕知らない!」
原書も読んでないし。
今異世界転生とか、めちゃ流行ってるけど、その走りが「ロードオブリング」様ってことしか知らないよ。
「だってさ。ーー樫木、お前が働くしかないだろ?」
面白そうに和木が言った。
「こいつは見えていないんじゃない。ーー見えないんだ」
和木が樫木の肩を叩いた。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月3日