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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
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必要な知識

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。


        ※


 鉄を生成するためには、高温を保つことができる炉をつくらなければならなかった。

 僕たちはリーインリーズ伯爵に相談を持ち掛けた。


「この国に鉄がないわけではないのに、更に鉄を作り出すの?」

「ええ。この国の鉄って高価すぎるし、武器にしか使われていないの、ちょっと偏っていると思うんです」

 僕は珍しく積極的に交渉した。


「自然界でそのまま金属の形を保っていられる、金属って銅とか金だけど、

産出量もあまり多くなさそうだし、この一族を更に豊かにするには、

鉄って絶対に生活に必要なんですよ」


「錬金術師はこの一族内にはいないわよ」

「構いません。僕作り方を知っているんで」

 リーインリーズ伯爵は驚いたように目を見張った。


「料理人かと思ったら、あなた錬金術師なの?」

「そんなようなものです。でも財力がない」

 力を借りたいのだと訴える。


「こいつ、ほんとにやりますよ」

 既に僕よりも、リーインリーズ伯爵の信頼を勝ち取っている和木が、申し添えした。

「この一族では鉄鉱石が手に入るので、鉄を生成することが可能なんです」

 僕は目力を強くして訴える。


 眼鏡がキラリと光る。

 もちろん原理しか知らなくて、作ってみたことはない。

 でも妙に自信があった。


「いいだろう」

 リーインリーズ伯爵は承諾した。


 部屋に戻り、設計図を作成していると、それを和木が覗き込んできた。

「この世界に来て、ちょっと不思議に思うことがある」

 和木の言おうとしていること、僕もわかった。


「高校生の俺たちが、こんなになんでもできると思うか?

俺、確かにこっちに来る前から植物の知識は豊富だったし、

料理に関しても、薬膳とかスパイスとかに興味持ってたよ。

でもこんなスラスラと記憶の中に蘇ってくるって、ちょっとした違和感を感じるんだ」


「同じだね、和木くん。僕もそう思う。

僕だって自分の部屋に、科学の本を大量に積み上げていたけど、

それの全部を暗記してたかっていったら、ちょっと違う。

そんなこと、イチ高校生に不可能だって思うんだ。」


 ーーまるで本の知識を丸ごとインストールされてるみたいな、揺るぎのない記憶力!!


 僕達は確信した。

 やっぱりこれが、異世界転生して僕達に与えられたスキルなんだって。

 現代人の知識だけが、スキルってちょっと頼りないけど、

生きていくには必要だった。


 このスキルがなければ、ちょっと詳しいぐらいで、

何もないこの世界で、物を作り出すなんてこと出来なかったに違いない。


「なんかさ、もったいないことしてたよね」

「ああ」

「僕達の世界って便利すぎて、なんでも揃ってるから、

一から物を作り出すってこと、あんまりなかったよね?」

「そうだな」

「もし現代でも、ある日文明って一気に滅びてしまったら、

同じことに困ったりするよね。

たぶん火を起こすことから、頑張るんだろうね。

なんでそういう、本当に生きていくのに必要な授業、失くなったのかな?」


 災害なんて起こらないとか、たかくくってたんじゃないかな?

 あまりにも日常が、平和すぎて。

「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月2日



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