乙女座同士
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
僕達が他界した世界で、僕と和木が従兄弟だったなんてこと、
この先も僕たちは気付くことはないだろう。
ただちょっと思ったのは名前の不思議だ。
和木、樫木、森。
僕たちの名前には全部「木」の文字が入っている。
単なる偶然たと思うけどさ。
こんな偶然って結構世の中にはいっぱいあって。
例えば、僕の父のマキちゃんの弟の奥さんの名前も、
僕の母さんと同じルイさんっていう。
単なる偶然。
後、僕の家の前に住んでいる、僕と同級生の男の子、
森利伸って名前で、僕と一文字ちがい。
これも単なる偶然だ。
あと、クラスメイトで親しくなったやつと、
誕生日が同じだったり、近かったり。
偶然は偶然を呼ぶんだ。
そして僕は文字や数字が、人の運命を引き寄せること、
あるんじゃないかって思ってる。
科学好きだから、ほんとは否定したいんだけれど、
統計をとれば、何か関連性を持った名前や数字の人が、
多くより集まってる仮説を検証できるような気がしていた。
僕達は電気信号を発しているから、無意識下で通じているのかなって、勝手な憶測をしているんだけれど。
僕と和木は調理場に座り込んで、スパイスの仕分けを始めていた。
「毒と食材を一緒にしておくなんて、危なすぎる」
和木は憮然と言いながら、作業を続けている。
「和木って誕生日いつ?」
「あ?」
くだらないことを聞かれたとばかりに眉根を寄せ、「こっちの世界まで来て誕生日なんて意味ねぇだろ?」と言う。
確かに僕達、多分死んだんだろうしね。
とすると、こっちに来たその日が誕生日で、
同じ日に生まれ変わったってことかな。
「僕前の世界じゃ、9月6日生まれ。和木は?」
「9月13日生まれだよ」
一週間違いか。
「樫木にも聞いてみたいな」
つぶやいた僕に、和木はため息をついた。
「ーー乙女か?」
「うん、君と同じ乙女座だ」
違う意味で揶揄されたのはわかっていたけど、
平然と僕は返答してやった。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月1日