ビックデータを完成せよ
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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森利刀の母親に、彼の部屋に入れてもらって、
アイは小さく声を上げた。
そこは日本橋と図書館が合体したような異空間だった。
図書館といっても日本十進分類法でいうところの400番代に偏ったラインナップ、つまり科学に関する本ばかりが積み上げられている。
それと歴史書か。
本棚に入りきらなくなった本が床にも積み上げられ、
その本の上には色々なフィギュアが乗っている。
けして狭くはない部屋なのに、可動域が極端に狭くなっている。
「うへっ、姉貴の部屋に似ている」
弟のコウがつぶやいた。
アイは腕を組んで唸る。
一般人から見たら、これはは汚部屋レベルだけれど、
ここには森の興味と、得ようとした知識が全て揃っているのだ。
手の届くところに全てが配置された、機能美。
コウに言われなくても、
アイもこの部屋に入った時に、同種の匂いを嗅ぎ取っていた。
いわゆるマニア、種別は違えどーーオタクの匂いだ。
この本を全部森の人工知能にデータ化すればいい。
アイは片っ端から、本の名前を携帯で控え始める。
「あの子ちょっと変わった子でね、私に似てコレクター癖があって。
2階だったから、その内床が抜けちゃうんじゃないかって、心配したくらい」
森の母親のルイさんが、少し笑った。
「いえ。素晴らしいです。お母さまも何か集めていらっしゃるんですか?」
「ん〜。日本刀。私の実家に昔からよく転がってたから。
あ、変な家族だったからもう絶縁してるわよ。兄さんが跡継いでるし」
そこまで言って、ルイさんは一瞬沈黙した。
「ーーまさか兄さんの子と一緒に逝っちゃうなんてね
知らなかった。同じバスケのチームメイトになってたなんて」
「え?」
コウが驚いたように聞き返す。
「実家って、もしかして和木ーー?」
ルイさんはうなづいた。
「兄さんに、私と同い歳の子供がい他なんて。
ヨースケくんって言ったかな?
リトウは友達もほとんどいなかったけど、最後は従兄弟と一緒だったんだって」
ーーだから寂しくなかったよね。
ルイさんは目に涙を溜めた。
「あの、お母さん。私達、和木君のことももっと知りたくて。
実家に入れていただけませんか!?」
森と和木が従兄弟だと知って愕然としている弟のコウを横目に、
アイは更なるお願いをした。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月31日