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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
74/144

生きてきた現実

気ままに投稿しています。



         ※


 リトウが好きだったのは、科学。

 その発展で、PCも好きだったし、プログラミングにも興味を持った。

 でも中学校でつまづいて、人間ーー、ほんと生き物にコンプレックス持つようになってしまった。


 森ルイが、森リトウの部屋で話してくれた内容に、コウと自分は全身全霊で意識を傾けていた。故人をしのぶって、故人が生きてきた歴史をどれだけ正確に掴むってこと。たとえビックデータとか理解できなくても、森リトウの人生をどれだけ辿れるか、そして生かせるか、が重要だった。


「あんた達が真剣だってことわかったから、話すよ」

 森の母親が言った。


「リトウはね、多分だけどこの家の歪な収入源、恥じていたと思う。

私もその気持ち、わかるの。うちの親厳格でさ。女優になりたいって家飛び出した自分を、絶対に認めなかったから。

親と子供で、価値観って全然違うってこと、リトウ産んで身に沁みてわかったんだ」

 ルイは苦笑した。


「まきちゃん、あ、まきちゃんって旦那のことね。まきちゃんは、底辺を知ってた。ほんとクソな人間社会とか、厳しさとか、全部知ってて、生きる道知ってる人だった。

くそ底辺でさ、まぁまぁ考える人だった。ーー人の生き様について」


「この社会、レールにうまく乗っかれた人は、それなりに生きるよね。でも、レールとか何って思っていて、生きるってこと、単に死んでないぐらいに思ってる側の人間にとっちゃ、何を楽しみに生きるのかってことばかり」

 一瞬先は闇なんだ、いつも死が隣り合わせだって、ルイが言った。 


 彼女が語るたびに、闇に引きずられそうになる引力にアイは耐えていた。

 森はすごい。

 率直に思った。


 たかだかだ十数年生きてきただけの自分達は、かなり家庭環境に影響される。

 母親の考え、父親の考え、家の方針、そんなものに左右されるのが、その家庭で育った子供には当然なのだけれど、森はちゃんと親の歴史を受け入れて、咀嚼して、インターハイに出ることで、アイデンティティを構築しようとしていた。


 中学校時代引きこもっていた、と聞いた。

 でも引きこもっていた時間は、決して無駄じゃない。


「彼が読んでいた本、実験していた記録、全部見せてくれますか?」

 アイは森の歴史を辿った。


 ルイさんという母親は、人間らしくて、ちゃんと森利刀という息子を愛していたんだと思った。


 料理なんて作らないらしい。

 玄関先に積み上げれたゴミ袋には、コンビニで買ったプラスチックの空のパッケージがたくさん入っていた。透明のゴミ袋に、その家庭の生活環境、スケルトンだよ。

 森は合宿中、「僕日頃料理してるんで」と調理班を引き受けた。

 森が居なくなって、この家庭はコンビニ食だ。


「彼の部屋、上がってもいいですか?」

 コウは言った。


「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月27日


このままでは、青春というのもを吟味しなければならないタイトル!

頑張ろうと思う今日この頃です。

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