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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
73/144

男の子だったんだ

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。


このような気ままな投稿でも、読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

てことで、続けます。


皆様のご意見、反応、感想、(誤字脱字申告は不要:もう、ノリでしか書いてないから、そのうち見直します)

何卒よろしくお願いします。

こういう設定にしてもいいんじゃな〜い? とかもありかと。

一緒に楽しみましょう。

        ※


 2020年から5Gが全国に広まろうとしている日本の現在、

人の死を見送る葬儀の形式が変化するべきだと、黒田アイは思っていた。


 故人をしのぶ。

 この時間は大切だ。


 でも遺品整理とか、故人がどうだったとか、ああだったとか語る時間で、

故人のビックデータをつくれば、その人の魂は何処かで生きる。

 それぐらい技術革新の時代に入っている。

 故人のビックデータを残し、そのデータが人工知能として生きてくれれば、人は永遠に死なないのではないだろうか。


 突拍子もないことを考えていると、非難されるかもしれない。

 けれどーー。

 納得して死ぬ人はいいけど、今回みたいに突然奪われた命はどうしたって悔やまれる。


 森利刀の葬儀の後、弟のコウと彼の家を訪ねた。

 玄関先で出迎えてくれたのは、森の母だろうか。

 彼女はずいぶんやつれた白い顔で、立っていた。

 コウがびっくりして視線を逸らせたのは、たぶん彼女があまりにもセクシーだったからだ。


 白い胸が大きく開いた男物のようなセーター、一枚を着て長く伸びた足は太ももから素足だ。


 官能的な臭いのする、きれいな女の人だった。

「この人、〇〇園の女優さんだよ。AV出身の!」

「コウ、あんたAVとか見るの?」

 意外に男の子なんだな、と感心して質問したが、

「僕じゃないよ。友達とかが見てるから、知ってるだけ」

 全力で否定してきやがった。

 別にいいのに。


「森君のお母さんですか?」

「そうだけど、リトウの友達?」

「バスケ部のチームメイトです」

 その姉です。二人はそろって頭を下げた。


 泣きはらした、くぼんだ目。

 招き入れてくれた手に視線をやって、アイはギョッとした。

 左手首に巻いた厚い包帯。そこに滲み出しているのは赤い血じゃないか。


 そのまま踵を返して帰りたくなった。


 母親という人に、今から聞く内容は、よけいな悲しみを与えはしないか!?

 自分の考えなど、到底理解してもらえないのではないか!?

 アイの中で迷いが生じて、玄関先でぎゅっと握った拳に力を入れる。


 ーーでも、もっと森利刀の、生きてきた歴史が知りたかった。

 もっと聞かせて欲しいと思う。

 そして正確なデータの元に、彼に生きていて欲しいと思っていた。


 それ以外、できることはないのだ。

 唇を噛み締める。


「あのっ……」

「森くんの話、もっと聞かせてもらえませんか?

子供の頃から、何が好きで、どんな本を読んで、家ではどんな風に過ごしていたのか。

何時間でもお話を聞かせてもらえませんか?」

 アイが決心して言葉にしようとした時、弟のコウがそれを遮って、森の母にお願いした。


 コウは盲目的に自分を信じてくれている。

 そして本当にこの行動が、失った友人達のためになるのだと、理解してくれているのだ。


 アイが一瞬躊躇したことを察して、言いにくいことを口にしてくれた。

 とても、真剣な眼差しで、懇願してくれる。


 さっきと違う意味で、男の子だったんだな、と思った。

 いつも自分に泣かされてばかり、それでも後ろを必死で付いてきたコウが、いつの間にか自分を庇って前に出る。


 少しの間、森の母は黙って考えて、

「うん、いいよ。誰かに聞いて欲しかったし」

と承諾した。


「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月27日

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