男の子だったんだ
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
このような気ままな投稿でも、読んでくださっている皆様、ありがとうございます。
てことで、続けます。
皆様のご意見、反応、感想、(誤字脱字申告は不要:もう、ノリでしか書いてないから、そのうち見直します)
何卒よろしくお願いします。
こういう設定にしてもいいんじゃな〜い? とかもありかと。
一緒に楽しみましょう。
※
2020年から5Gが全国に広まろうとしている日本の現在、
人の死を見送る葬儀の形式が変化するべきだと、黒田アイは思っていた。
故人をしのぶ。
この時間は大切だ。
でも遺品整理とか、故人がどうだったとか、ああだったとか語る時間で、
故人のビックデータをつくれば、その人の魂は何処かで生きる。
それぐらい技術革新の時代に入っている。
故人のビックデータを残し、そのデータが人工知能として生きてくれれば、人は永遠に死なないのではないだろうか。
突拍子もないことを考えていると、非難されるかもしれない。
けれどーー。
納得して死ぬ人はいいけど、今回みたいに突然奪われた命はどうしたって悔やまれる。
森利刀の葬儀の後、弟のコウと彼の家を訪ねた。
玄関先で出迎えてくれたのは、森の母だろうか。
彼女はずいぶんやつれた白い顔で、立っていた。
コウがびっくりして視線を逸らせたのは、たぶん彼女があまりにもセクシーだったからだ。
白い胸が大きく開いた男物のようなセーター、一枚を着て長く伸びた足は太ももから素足だ。
官能的な臭いのする、きれいな女の人だった。
「この人、〇〇園の女優さんだよ。AV出身の!」
「コウ、あんたAVとか見るの?」
意外に男の子なんだな、と感心して質問したが、
「僕じゃないよ。友達とかが見てるから、知ってるだけ」
全力で否定してきやがった。
別にいいのに。
「森君のお母さんですか?」
「そうだけど、リトウの友達?」
「バスケ部のチームメイトです」
その姉です。二人はそろって頭を下げた。
泣きはらした、くぼんだ目。
招き入れてくれた手に視線をやって、アイはギョッとした。
左手首に巻いた厚い包帯。そこに滲み出しているのは赤い血じゃないか。
そのまま踵を返して帰りたくなった。
母親という人に、今から聞く内容は、よけいな悲しみを与えはしないか!?
自分の考えなど、到底理解してもらえないのではないか!?
アイの中で迷いが生じて、玄関先でぎゅっと握った拳に力を入れる。
ーーでも、もっと森利刀の、生きてきた歴史が知りたかった。
もっと聞かせて欲しいと思う。
そして正確なデータの元に、彼に生きていて欲しいと思っていた。
それ以外、できることはないのだ。
唇を噛み締める。
「あのっ……」
「森くんの話、もっと聞かせてもらえませんか?
子供の頃から、何が好きで、どんな本を読んで、家ではどんな風に過ごしていたのか。
何時間でもお話を聞かせてもらえませんか?」
アイが決心して言葉にしようとした時、弟のコウがそれを遮って、森の母にお願いした。
コウは盲目的に自分を信じてくれている。
そして本当にこの行動が、失った友人達のためになるのだと、理解してくれているのだ。
アイが一瞬躊躇したことを察して、言いにくいことを口にしてくれた。
とても、真剣な眼差しで、懇願してくれる。
さっきと違う意味で、男の子だったんだな、と思った。
いつも自分に泣かされてばかり、それでも後ろを必死で付いてきたコウが、いつの間にか自分を庇って前に出る。
少しの間、森の母は黙って考えて、
「うん、いいよ。誰かに聞いて欲しかったし」
と承諾した。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月27日