読むな、環境保護団体!
気ままに投稿しています。
偽りの神々シリーズで元気に生きている、本編のキャラクターを紹介します。
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました」 記憶の舞姫13「ヨースケ・ワギ」
和木が出ます。
「敗れた夢の先は三角関係から始めます」 星廻りの夢10「リトウ・モリ」
森リトウも、この話でちょいちょい出ています。
森リトウは健全。和木はまぁ不健全。
※
広い、手入れの行き届いた厨房に僕たちは通された。
そこは合宿所の調理ホールほどの大きさがあった。
調理台はピカピカのステンレス、ーーではない。
2~3メートルある巨大な一枚板の木が、物々しく4枚並んで、
それが調理台代わりだ。
敵の料理人たちの数は10名程度だった。
その数と、調理場を見て僕たちが怯むだろうと、にやにやしている。
けれど僕たちは全く動じなかった。
逆に、ちょっとこの厨房に文句もある。
ほんとに衛生的ですか?ここ。
食中毒とか出してない?
それに、女神ばっかりいると思っていたら、料理人は男ばかりでむさ苦しい。
なぜか女嫌いの和木。
女性に免疫のない僕。
怯むどころか、
僕たちはむさ苦しいところの方が、実力発揮できるんだ。
衛生環境はさておき。
和木が予想したとおり、神様の一族には多くの香辛料が並べられていた。
「よっしゃー!」
これでカレーを再現できるぞ。
二人で前かがみにガッツポーズを決め、作業に取り掛かる。
「俺がスパイスを嗅ぎ分ける。
だから森は玉ねぎ切って、炒め始めて。
大きさはみじん切りで。
じゃがいもは1センチ角。芽があれば深めにカット、
この時代だから毒性がどうかわからん。
にんじんもミックスベジタブルで揃えとくか」
「オケー、シェフ」
薪をくべて火を起こす方法にも慣れてきていた僕は、
野菜の下処理と、火の準備にとりかかった。
合宿の時からそうだったんだけど、肉以外の下処理はだいたい僕が片付ける担当だった。
和木は肉をさばいたり、味付けしたり、配膳したりする。
今回はこの異世界のスパイスから、カレー作りに適したものを
選出する作業が大変そうだ。
敵の方は、大きな焼き場に巨大な肉を串刺しにしたものを、
回しながら焼いている。
そうだよな、この時代オーブンとかないもんな。
鉄を生成できれば、火のオーブンぐらいなら作れそうだけどな。
敵を視察しながら、僕は下処理をこなしていった。
「シェフ、肉は何の肉かわかりません。魚じゃなく哺乳類。赤身強い」
「鳥でも牛でもなさそうだな。
おい、コック。ーーいやそこの料理人、この肉どこで取ってきた?」
相手の料理人の一人を捕まえ、和木が質問した。
「海ですよ。大きな魚の肉」
魚ーー!?
骨ないよ。すごく筋肉発展してそうだけど。
「鯨、みたいなものだと思って調理しよう」
和木は言った。
うわっ!
鯨の肉、和歌山じゃ普通小学校の給食に唐揚げで出てきたど、
今じゃ反捕鯨団体に太地町、テロ並みにやられてたよね。
環境保護派に叩かれない?
僕の心配を察して、和木が顔の前で、掌を縦にブンブン振った。
「ここ異世界。郷に入っては郷に従え」
だよねぇ。
人間って、食べられるもの模索してきたから、今生きてる。
今飢餓で死にそうな時に、絶滅危惧種とか、心が通じるものだから食べないとか、通じるんかな?
せめて同種だけは食べないようにとか、心が通い合った異種でも友達は食べないとか、そんな線引きしかできない時代も、きっとあるよな。
「鯨だと考えたら、臭みはそんなないはずだけど、カレーに入れるには下処理するよ」
僕らは必死で、カレー作りで戦った。
文明人の僕らが、料理で異世界人に負けるなんてありえない!
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月26日