いじめかな?
気ままに投稿しています。
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次の日から猛烈ないじめが始まった。
いじめって言ってもメンタルにくる方じゃない。
僕の肉体に対してのいじめだ。
朝練で、運動場10週走り込みの後、
シュート練習300本、
放課後はハンドリングの練習に、ご丁寧なことに、3年の先輩5人が僕についた。
和木と黒田が、マンツーマンでゴール争いを続ける横で、
僕は先輩達に、いじめーーもとい可愛がられていた。
5人が器用にドリブルしながら、ゴール下の自分にかかってくる。
「もっとしっかり狙っていけ」
くるくる回って、ボールを目で追う。
ダメだよ、僕の目が回ってくる。
なんとかボールを取りたくて、僕は手を伸ばした。
タンー。
指の先にボールが触れた。
取ることはできなかった。
でも!先輩から先輩へ渡るパスを妨害できた。
ヒューッ、とそれを横目に見ていた和木が口笛を吹いた。
「リーチ長い」
届いた、ほんとに届いた!
それに和木に感心された!
嬉しくなった。
手を伸ばすだけでボールにタッチすることが出来た。
でも――。
いてーっ!
指折れてるんじゃないか、ぐらいの痛みが走る。
届いたことの驚きと喜びで、痛みが一瞬とんでしまってたんだけどね。
すぐに指を抑えて、うずくまる。
「先輩、指折れました!」
「折れるか、アホ。ただの突き指だ、後で冷やしとけ」
「その調子その調子」
「続けていくぞー」
え?
続けるの?
やっぱり、いじめかもしれない。
ぼくは今までこの指で、実験かゲームしかしてこなかったっていうのに。
こんなに痛むのにぞっこーするの?
自慢じゃないけど僕の握力25だよ。
前にクラスの女子に負けたことを思い出した。
すらっと伸びたキレイな指には、ネイルだって(しないけど)バエるくらいなんだからな。
「はい、ぼーっとすんな、眼鏡」
「一年、しまってこ」
先輩たちは黒田のことは、黒田君という。和木の事も和木君と呼ぶんだ。
なんで俺の事は、眼鏡とか一年っていうのかな。
僕の名前は森リトウなのに。
森君って言われるまで、僕は頑張らないといけないんだなぁと、この時思った。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年9月9日