馬なんて無理
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
「私たちの一族を見せてやろう」
なんの神様のきまぐれなのか、
僕達は女神さまに神様の一族へ招待された。
連れていかれるのは僕と和木と、ハチ公だけだった。
万が一まずい状態になったら全滅をさけようという、
チーム異世界転生組の僕らは、樫木とリオナに目配せした。
相変わらず和木は仏頂面で、ポケットに手をつっこんで歩いていた。
「こんな人間連れて帰ったら、日が暮れてしまいますよ」
リーインリーズ以外の女神は不本意なようで、馬に乗りながら頭をかかえている。
「確かにな」
徒歩の僕たちは、馬の速度についてくのがやっとである。
リーインリーズはふと考えて、
「お前たち、馬に乗れるか?」
と質問してきた。
「乗れません」
まさか和木は乗れるの?
和木も首を振る。
「そうか。じゃあそこの生意気なおまえ、私が後ろに乗せてやる。
それからシルク、おまえはそっちの背高いのを載せてやれ」
リーインリーズに命じられて、シルクと呼ばれた女神は露骨に嫌な顔をする。
僕だって、馬に乗るなんて怖いから嫌だよ。
僕は2、3歩後ずさった。
「仕方がない、伯爵の命令だ。後ろにのれ」
手を差し伸べてきた。
和木君助けて!
和木に救いを求めると、和木はリーインリーズの手をとって、
彼女の後ろに器用に乗馬している。
「僕、自動車か自転車にしかのれない。――せめて馬車にして!」
と主張したら、女神シルクから思いっきり白い目でみられてしまった。
「置いていきますか? こっちのは別にどうでもいいでしょう?」
「たしかに」
うわっ。こんなところで放置されたら困るよ。
「乗ります! 乗せてください!」
僕は両手を差し出した。
シルクは鼻で笑って、僕の手をとって
馬の上に引きずり上げた。
女神さまは怪力だった。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月23日