田舎を舐めるな!
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
終わりは見えていて書いていますが、ほとんどその日その時生まれる、アドリブです。
お付き合いよろしくお願いします。
※
放課後、僕は先輩たちがいる時間帯を狙って、部室のドアを蹴破った。
いや、蹴破るなんて恐れ多いことなんかできなくて、
本当は震えながらゆっくりとドアを開けたんだけれどさ、
ーー気持ちは、蹴破ったぐらいの勢いである。
「鳶先輩! あの、聞きました。ーーぼっ僕は、その……バスケット初心者で」
訴える声が震えて小さい。
心の中のボリュームは最大音量だって言うのに。
なんて情けない自分。
「あ、ポジション聞きにきたの? センターな、おまえ」
「身長活かせるだろー」と、笑われる。
僕の足はガクガクと震えた。
センターって言ったら、ゴール下にいて、
獣のような運動神経の選手たちをブロックしたり、
あいつらを押しのけてシュートしたり、
そんな忙しいポジションじゃないか。
「身長なら、和木君の方が高いです!」
「何お前? ポイントガードがいいの? ドリブルもパスも全然だめじゃん」
それくらいわかってますって。
「じゃなくて、インターハイとか僕にはちょっと早いって言うか……」
ちょっとじゃないよな。
いくらバスケ部に入部したからって、
そんな大そうな夢描いちゃいないよ。
入部して1ヶ月も経っていないし、足だって痛めているのに。
「6月初旬の県大会で、3回勝てばインターハイだよ。代表校4つに残ればいいだけだから、楽勝だろ。田舎を舐めるなよ」
舐めてませんってば。
和歌山県。全国でも高等学校の数が少ない。
ワースト10位に入るんだからな。
「平均でも3回から4回試合に勝てば、もうインターハイだよ」
先輩は得意げだ。
ちなみに東京都は435校、和歌山県50校、島根と同数で。
スマホでネットを瞬時でググって、唖然とした。
もちろん不公平がないように、東京だって試合回数は同じで選抜される。
でも層の暑さは、全然違うのだという。
「それで中学時代バスケのエリート2人が入部してきたんだから、チャンスだろ?」
先輩はニヤリと笑った。
「俺ら三年にとったら最後のチャンスなんだ。抽選結果も良くてさ、たった3回勝てばインハイ出場校なんだぜ。先輩に花持たせろよ」
「でも僕が出たら三年生の誰か出れなくなるんじゃ? ーー二年生だっているのに」
「おまえ身長いくつ?」
「188センチです」
「日本人の平均身長知ってる?」
またしてもスマホでぐぐって答える。
便利な世の中だよ。
「男子平均身長ですね」
Googleタイム。
「172センチです」
「じゃあ拒否権ないってことで」
ははははっと笑って、先輩は掌をひらひらさせた。
「オタクの青春は異世界転生」
2020年9月8日