少女誘拐!?
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
「和木君、刀は抜かないで」
僕は言った。
流石に人間を切って欲しくはない。
逃げようとした僕たちに、村人は石やりを構えた。
この時代って、いや、この村には鉄が未だないんだな。
土と石の時代。
日本の進化で言うところの、縄文式時代ってとこだろうか。
酔っ払った樫木の手を引いて、僕は逃げ専門。
戦うのは和木。
その横でハチ公が暴れていた。
体格さと武術の腕で、圧倒的に和木が有利だった。
何人かかっても倒せそうにない、頼もしいチームメイト。
しかも僕がオーダーした通り、
和木は刀の鞘を抜かずに、敵の攻撃を交わしたり、殴ったりしているだけだ。
僕たちは村の外に向かってスピードを上げた。
和木が先頭を走り、僕が樫木の手を握って走る。
そして樫木はーー?
おい!!
樫木お前は誰の手を握ってるんだよ?
先程の宴で見た、僕たちと同い年くらいの女の子の手を引いている。
「樫木この子誰!?」
確か酔っ払って、この子に絡んでいたのを目撃したけれど、
連れてきちゃったの!?
僕は目玉が飛び出るほど驚いた。
樫木のせいで、逃げている被害者のはずの僕たちは、
誘拐犯にされちゃうじゃないか。
「樫木君、その子の手を離して」
僕の悲痛な叫びに気付いて、和木も面くらっている。
「おい樫木、いい加減、目覚ませ!」
二人で必死に説得するが、樫木は女の子を引っ張っている。
うわぁぁあ。
このまま村を出たら、未成年誘拐犯確定じゃないか!?
「樫木!」
僕たちが声を揃えて最終説得にかかったが、答えたのは樫木じゃなかった。
「お願い! 私も連れて行って!!」
大きい目をうるうるさせながら、少女が叫んだ。
その声は懇願だった。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月16日