人、人、人っ
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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僕らは縄で拘束されたまま、村長に会うことを許された。
うわぁ、弥生時代ってこんな感じなのかな。
高床式で木と藁で出来た小さな家が、村中にひしめいている。
ここしばらく、文化ってものに触れてこなかった僕たちは、
些細な集落を目にしても、なんだか嬉しかった。
人がいるって、やっぱりいい!
元引きこもりの僕がいうのもなんだけど、
人って人がいないと生きていけないよ。
引きこもってても、引きこもる家を提供してくれた僕の両親がいたし、
ネットゲームの先には繋がっている人がいたし、
アニメ見たって、それを制作してくれる人が、
僕の周りには必ず居てくれたんだって思った。
こんな何もない世界に来ちゃって、ほんと人の有り難みが身に染みる。
「おまえ、それ以上に怖いってこと忘れるなよな」
う頂点になる自分を、和木が諌めた。
「人って結構怖いんだぜ」
君がいうと、ほんと後ろにハチキューさんの修羅場が見えるから、
説得力があった。
「わかってるよ」
そんなのわかってるから、僕は引きこもりになったんだ。
村長の家は、当たり前だけど村では一番立派だった。
立派っていっても、大きさがちょっと大きいのと、
家を囲む石垣が付随してるってことだけだったけど。
「お前たち、どこから来た?」
定番の質問だったが、初めて受ける面接試験みたいに、
僕は一人ドキドキした。
「川の上流の方です。仲間と逸れてしまって」
「そうか」
和木が答えると村長はあっさり納得した。
あれ? もうちょっとなんかない?
僕たち結構貴方達と違う格好だし、もうちょっとなんかない?
肩透かしを食らったが、その後の村長の言葉は重かった。
「一晩だけ泊めてやるし、夕食も振る舞おう。
けれどこの村は、他の村人との関わりをせんし、
よそから来た者を仲間にするつもりはない」
一言で拒絶されてしまったよ。
どうするの和木くん?
交渉人を不安な思いで見つめるが、和木は礼を言った。
「それでいい、感謝する」
え?
また放浪の旅に出るの?
和木の袖をツンツンと引っ張ると、
「攻撃されないだけでもマシだ。この村ではちょっとした情報収集だけにしておこう」
こそっと和木が耳打ちした。
そうだけどさ。
ううーん。せっかく人に出会えたのにもったいない。
そう思ったけど、樫木も和木に同感だと言ったので、僕は意見を引っ込めた。
対人関係スキル、多分僕が一番低いんだろうから、
逆らわない事にしよう。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月13日