負けないし。
気ままに投稿しています。
お付き合い、よろしくお願いします。
※
コウが目を覚ました。
明け方眩しそうに目を細めて、半分だけ目を開けて、ここがどこか確認している。
私の顔を見て、
「うわっ! 起きる、起きるから殴らないで!!」
開口一番失礼だ。
「殴んないわよ。ここ病院」
毎朝、寝起きの悪い弟を叩き起こすのが私の役目だった。
だから反射的に、朝私の顔を見ると、コウは自分の腕をクロスして、防御態勢に入った。
「しっかりしないさい。家じゃないでしょ!」
頭に寝癖をつけながら、ぼーっとしている。
「うわっあっ!」
突然コウは叫んだ。
「姉ちゃん、バスが事故ったんだよ。インハイどうなった!? 俺たち間に合わなかった??」
そうだよね。
おまえの思考はそこで停止。
弟ながら、イケメンでさわかやな感じなのに、
トレトレぴちぴちの天然っぷりに、彼女の一人もできやしない。
「事態はもっと深刻なんだけどね、コウ」
少し声を低めたアイは、半顔になって弟を見た。
「あんた、親友殺したい?」
事態が飲み込めない弟の目を、早く覚ましてやりたかった。
「助けたいなら、さっさと協力するのよ」
この、ボケ、ナス、カス!
「姉ちゃん、心配かけてごめん」
「この、ボケ!」
コウの胸に頭をぶつけた。
生きててよかった。
目を覚ましてくれてよかった。
これで負けない。
黒田アイは思った。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月10日