裸族、万歳!
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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何日が進んだところで、僕達は川にたどり着いた。
「魚、いるかな?」
僕たちは究極の飢餓状態だった。
お菓子やカロリーメイトを食べてしのいできたけれど、
そろそろ肉や魚にありつきたい。
合宿最終日に食べた、カレーの味が恋しいよ。
川の水は澄み切っていて、
この辺りが人に汚染されていないことを知らせてくれた。
行けども、行けども、人に会わない。
日本だったらそんなこと考えられないのに。
澄んだ川の中には生き物の影があって、
僕たちは期待に胸を膨らませた。
和木がとってきてくれた解熱剤や化膿止めのおかげで、
近頃は樫木の体調も回復しつつある。
でも食べないと体力戻らないもんな。
「よし、今日はここで食料調達しよう」
「賛成だ」
「賛成!」
三人で拳を近づけて笑った。
あと嬉しいのが体を洗えることだ。
5日くらい、野宿して彷徨った。
現代の日本社会じゃ、5日も風呂に入れないなんて、もう拷問でしかない。
血は止まっているけれど、僕の頭はカパカパだ。
そして堪らなく痒かった。
なんか自分が臭いような気がしてきていた。
ちょうどいいから水浴びするぞ。
同じことを考えていたのか、三人で顔を見合わし、
川べりに走って行った。
バスケ部の練習の時、和木や黒田のスタイルの良さに、
敗北感を感じていた僕だったが、今はもうそんなこと気にしない。
いいんだ素っ裸で。
もう風呂だって入れてない。
ばっちい自分たちは、価値観の違う世界に来て。
空腹を抱えて、魚を手掴みででも取らなきゃならない。
シビアな世界。
ゲームもアニメもない世界は、
体だけに訴えかける力は強いけれど、
生きているって気がするけど、
過酷だった。
全裸万歳!
現代社会でも、裸族ってあるらしいけど、
こんな気分なのかな。
太ってるとか、スタイル悪いとか、恥ずかしいとか、
そんな感覚じゃなくて、人も生きている動物と一緒ってこと。
川に飛び込んで、魚を追いかける。
バシャバシャと水しぶきを飛ばす。
キラキラと水面が輝いて、僕たちの頬を明るく照らした。
「ワホーン!」
結局食料調達してきたのは、ハチだけだったけど。
完全に人の文明に侵された自分たちは、自然に太刀打ちできなかったけど。
ハチのおかげで大量だった。
「すごいなお前」
尻尾を振って得意げなハチを僕は認めた。
僕には懐いていないけれど、ハチは和木の前に魚を積み重ねて、得意げだ。
和木がえらいえらいと、ハチの頭を撫でる。
樫木は悔しそうに水面を蹴っている。
それくらい回復したことに、僕たちは安心した。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月8日
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」
にその後の、キャラクターが登場します。