虫は美食?
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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僕たちは空腹だった。
和木がバスに医薬品と食量を取りに戻る洗濯をしたが、
それを待つ僕たちは、手持ち不沙汰だ。
丸一日以上何も食べていなかった。
僕にとっては、色々と二次元に夢中になることがあり、
1日くらい食べずにいることは、よくある事だったのだけれど、
運動しての状態じゃない。
運動しなければ、だいたいお菓子だけでも生きていけたのだけれど、
バスケ部に入部して、昨日から歩いた距離を考えて、
腹時計は盛大に鳴った。
グゥーーーー!
ポケットに入っていたグミも、昨日の夕飯で失われた。
明け方早くに出て行った和木はまだ戻らない。
和木が持ち帰るだけを期待して、食料班の僕が動かないのってどうなんだろう?
他人任せってどうなんだろう?
僕は樫木と違って、足を使って動けるのに。
そんなふうに思い始めた。
「樫木くん、意識大丈夫?」
「ああ。歩けるくらいには大丈夫だよ」
いや、それは痛いだろ?
だいぶん血も流れているし。
「森こそ、頭の出血止まったの? なんかさ、頭がパリッパリになってるけど、それワックスじゃないよね」
んー。ワックスって買ってみた事ないからさ、多分これ、かっぱりついた血なんだけど。
僕の横髪から前髪にかけて、僕が血を拭った方向に跳ねて、固まっていた。
こんな赤土の、サボテンが生えたような土壌で、食料調達班には何ができるのか。
知識だけは豊富な頭でっかちな僕は、ピンと手を打つものに思い至る。
うげっ!
お菓子という文明の美味な人工調味料に慣れた僕には、
思い出したくもない、ビジュアルがよくない、カルシウムとタンパク質を持った生物を思い出した。
和歌山の高野山。世界遺産で有名なこの地の精進料理では、よく出されるところにヒントがあった。
イナゴの佃煮。
やっぱこんなとこにいるのは、哺乳類じゃないよね、昆虫なんだ。
空腹だ。
先進国日本でも昆虫を食べる文化は、密かに勢いを持っている。
テレビで見たけれど、可愛らしく天使のような女子でさえ、
昆虫食に染まっている人もいるというのだ。
でもーー。
まだ僕は、昆虫をご馳走だとは思えない。
だってさ、イナゴってバッタみたいなもんでしょ?
バッタを口に咥えてみてよ。
想像しただけで、あの細かい節の足が、顎に突き刺さるし、
それよりも胴体の、ちょっとわからない身の詰まったところ、
あれってなに?
って、妄想膨らまして吐くよ。
「樫木さ、アリとかも食べれるんだけど。ちょっとタンパク質集めてきていい?」
お前が見えない範囲には行かないから、と僕は言った。
意外なことに樫木は拒否らなかった。
「今はなんでも、食料になるものに文句言えないよな、調理班」
樫木は言った。
わかった。
僕は調理班として、和木が戻るまですべきことをするよ。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月6日