派手な奴ら
気ままに投稿してます。
お付き合いよろしくお願いします。
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少し意識が戻った樫木くんを抱き抱えて、
僕は出家した坊さんの気分になっていた。
「大丈夫だよ、和木くんがきっと薬と食料をくれるから」
安心させるような言葉を、一生懸命抽出していた。
ここが日本じゃなく、異世界かなんかなら、
女神とか現れろよ、早く!
って思う。
僕のチートスキルでもなんでもいいよ、
ここが異世界なんだった、空中にアイコン出て、レベルぐらい表示してくれ。
願わずにはいられなかった。
そもそも同じ容姿で、同じ情けなさで、突出したスキルもないなんて、
これが異世界転生ならクソ喰らえなんだ。
戦う能力がないなら、せめて
「ヒール、ヒール、ホイミン」
そんなのを用意して欲しかったよ。
「ごめん僕やっぱ、なんの能力もない」
樫木に風が当たらないように、傷口が化膿しないように、
ただ見守っているだけ。
できることといったら、熱が高くなるから、
昨夜和木と飲んだサボテンの実を蒟蒻の大きさに切って、
樫木の額に当てるだけだ。
「見捨てずに背負って逃げてくれたやん。すまんな、俺こんなで」
ありがとう、と樫木は言った。
日頃はまぁまぁ腐しあっていても、こんな時には素直な言葉って出てくるもんだよな。
これくらいの関係性があれば、インターハイ優勝だって、簡単だったんじゃない?
僕は思った。
「黒田、どうした?」
樫木もルームメイトのことが気になるようで、僕に聞いてきた。
「わかんないんだほんとに」
正直な気持ちだった。
「でも黒田って、なんか金ピカだったから、きっと無事だと思うんだよね」
僕が言うと、樫木は笑った。
「金ピカってお前」
ははははっと、ツボに入ったようだ。
「確かに、俺と並ぶほど派手な男だったよ。きっと無事だよなぁ」
樫木、ごめん。
君は熱苦しいけど、黒田ほど目立ってない。
(口には出さず、考える)
「きっと無事だよ」
和木と並んで、目立つと言ったら半端なかった。
「あの、派手な奴らに会いたいよな」
樫木が言った。
同感だよ。
僕も思った。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月5日