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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
31/144

グミは腹持ちいいはずだ!

気ままに投稿しています。

軽く読んで、お付き合いください。

        ※


 文明ってものを失ったら、人間ほど無力な生き物ってないんじゃないだろうか。

 満点の星と赤土の大地を、僕たちはひたすら歩きつづけた。


 でも樫木の体が、僕の体で震え出したので、

僕は怖くなって足を止めた。


「ちょっと休もう」

 声がうわずってしまったが、

逆にそれが僕の緊張感を伝えてくれて、和木は了承してくれた。


 僕たちは大きな岩を探して、岩に背中を預けるようにして休む事にした。

「樫木くんの熱が高い。それにたくさん出血したから、ちょっとショック状態になってる」

「止血はしたけど、やばいよな」

 僕たちは医術の心得なんてない。

 ただ不安だった。


「ここが日本じゃなかったら、救助なんて来ないのかな?」

 僕たちは喉が渇いて、サボテンのようにトゲトゲの肉厚な植物を切って、

その汁を啜っていた。

「サボテンとか、ほんとここ何処って感じだよね?」

「ああ」

 よく喋る僕とは対照的に、和木は黙って何かを考えていた。


「夜が明けたら、一旦バスに戻ろうと思う」

 そして決意したように言った。


「ーーでもっ、もう何時間も歩いてきたよ。それに……」

 狼みたいなものに、みんなが食いちぎられていたら。

 そんなの目にしたら、耐えられない!!!


「ああ、わかってるよ。お前たちは、ここで待ってたらいい。俺が行って見てくるから」

 和木の男気には感服する。


「だ、だ、だ、ダメだよ。そんな一人で」

 危ないし。

 和木がいないと僕不安だし。


 不足の事態が起こった時、人間の本質って出てくるよな。

 やっぱ僕、弱腰だ。

 怖いことは嫌だし、樫木を抱えたまま和木と離れるのは嫌だった。


「おまえ、俺のこと信じられる?」

 和木は僕に唐突に聞いてきた。

 僕はぶんぶん、と首を縦に振る。

「当たり前だよ。でなかったらきっと、バスから一歩だって動けなかった」


「じゃあさ、もう一回信じろよ。バスの中に、薬とか積んでたはずだから、とってこないとな。樫木このままにできないだろ?」

 そう言って、和木は刀の使い方を僕に教えると言った。

「だめだよ、和木くんの方が危険なんだから。この武器手放さないで!」

 一緒に行きたかったけれど、これ以上樫木を動かせなかった。

 それに僕は、あの地獄のようなバスにもう一度戻ろうなんて、考えることもできなかった。


「ごめん、信じて待つけど、せめて刀は持って行かないと」

 ほんと、情けなくて、頼りなくて、君ばかり頼ってごめん!


「いや。もし動けない樫木とお前が襲われたら、こいつで戦わないといけない」

 和木は僕の手に刀を持たせた。

「俺は鞘だけ持っていくよ。こっちの強度もかなりのモンだから、何かあったらこれで殴る」

 和木の決意が男らしくて、すごくつらい。


「怖くないの? 怖い、よね?」

「あほ」

 和木に怒られた。


「お前みたいに素直なやつ初めて」

「怖いこと、全部押し付けてごめん!」

 ははは、と和木が笑った。

「お前より修羅場には慣れてるんだって」


 手足が冷えてきて、僕は樫木を抱き抱えた。

 あ、そういえば。


 僕はお菓子好きなオタクやろうだ。

 ポケットの中にはいつもアニキャラのグミを入れていた。


「ここにいるの黒田じゃなくてごめん」

 役立たずで、君の気に入ってるやつでなくてごめん。


 でもさ、そういえば僕のリュックの中身、お菓子だらけだった。

 僕はポケットの中からグミを取り出して、和木に差し出した。


「でも、グミ持ってたよ」

 和木はそれを受け取って、袋を開けた。

「今日の夕飯だな」

 軽く笑った。

「それに僕の目立つリュック」

 300円ガチャで集めたキャラクターをいっぱい貼ってある水色のリュック。


「もしバスから持ち帰れる状況なら、中身、全部お菓子だから」

 頭をかいて、僕は恥ずかしそうに和木に言った。

「オタクの青春は異世界転生」:2020年10月4日


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