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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
24/144

僕、死ぬ。

気ままに投稿しています。

異世界転生モノで、違うシリーズに同じ登場人物が登場します。

「敗れた夢の先○○○」に一番出てきますけれど、文明語るときに、今の世界無視できないですよね。



     ※


 バスワークやドリブルができるようになって、

 バスケらしくなってきたじゃないか。


 僕はバスケを介して、いろんな人に出会うことになった。


 相手の目を盗むこと。

 相手の力量を測ること。

 人を見る目、みたいな力がついた気がした。


 同時に、「科学ってなにっ?」て、思ってしまった。

 僕が好きな科学よりも、人はずっと先に進んでいて、身体能力や精神能力が優れた人が、

やっぱり僕の先を行くのだろうか。


 ちょっと悩む。


 でもさ、バスケットボールの構造、人は知ってる?

 弾むようにするために、

 ゲームを楽しくするために、

施されたボールへの執念って、突き詰めた人間じゃないとわからない。


 人って、ほんとしょうもないことから進化してるんだよね。

 遊びたいとか、ちょっとモテたいとか、人よりも一歩優れたいとか、そんな努力と工夫が今の社会を作ったんだ。


 うちの親のように、異世界転生したいとか、

 あんな不確かな世界に行きたいなんて、本気で願うなら自殺行為なんだ。


 全くのド素人がインハイ目指すことに似ているんだって、

 この世界にいる僕は思った。


 容姿において優れた点は、手足が長く、指も長いってことだけ。

 地味でオタクの僕は、この現実社会じゃとうてい、リア充男子に勝てるわけがない。

 生まれた時からカリスマ性がある黒田コウ。

 整った容姿、それから強気な性格で圧倒的な存在感を知らしめる和木ヨースケなんかとは、僕は違った。


 平凡ながら、一笑懸命生きるってこと、

バスケがそれを初めて教えてくれた気がしたんだ。

 そして僕たちの練習や時間は、この先の「人の世」につながっているんだって、信じていた。

 

 一緒に生きているって時間が大切なんだって思う。


 合宿最後の日に、和木はカレーを作った。

 ビーフストロガノフから始まり、テリーヌとか、オレンジソースとか、ちょっと食べたことがない料理を彼は献立にしていたのに、最後の合宿の日は、カレーを作った。スパイスを使わない、極ありふれたカレールーを三種類ぐらい混ぜたカレー。


 馴染みのある、家庭で絶対に食べたことのある料理に、僕たちは飢えていた。

 たとえそれが、ボン○○○とか、ククレ○○○とかだったとしても、バスケ部全員の記憶の中に。この日食べたカレーの美味しさは、忘れられることはなかったと思う。


「よっしゃ! これで俺たちがインターハイに出場決定だよな」

「樫木、お前はスタメン決定してないからな。黒田の代わりにベンチな」

 そんな軽口を言い合っていた。


 僕たちは地区予選を3回勝ち抜いた。

 努力が報われたのだと、満悦至極になっていた。


 ーーそれなのに、奢れる者は久しからず。

 現実は残酷だった。


 インターハイ出場が決定して、第1回戦目の試合に向かうバスの中、

僕たちは地獄を見ることになった。


 5月19日午後4時25分ごろ、山梨県鳴沢村内の県道を走行していたワゴン車が対向車線側へ逸脱。対向してきた大型観光バスと正面衝突する事故が起きた。この事故で双方の18人が重軽傷を負っている。


 死者は三人。重傷者は五人。

 若い人が命を落としたことに、ニュースは速報で前途ある若者の死について、大袈裟なくらいクローズアップした。


 死者。

 和木ヨースケ。

 樫木アキ。

 そして僕だよ、森リトウ。


 僕たちインターハイに向かうバスの中で、カーブを曲がりきれなかったバスの運転手のせいで、命を落とした。


 誰か、ーー誰か、俺達を、まだ殺さないでくれ。

 全てが中途半端なんだと、僕は祈った。

「オタクの青春は異世界転生」2020年9月28日

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