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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
21/144

生き物係りと組長

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

        ※


 バスケ部の練習は9時に始まり、17時に終わった。

 僕と和木は、調理班と名付けられて、16時に早く上がり、

食料の買い出しと、夕食の下準備を担当することになった。


 和木はチーム監督よりもチーム監督らしかった。

 ポイントガード(PG)として、チームの皆をよく観察している。

 最初に持った印象は無神経。

 けれど、思っていたよりもかなり繊細なやつだ。


「キツくない、合宿?」

 買い出しがてら、僕は聞いた。

「いやなんで?」

「いつも三人にマークされてる」

「あれは本番に備えてやってるだけ。ポイントガード抑えに来てる」

 和木は、スリーポイントの成功率も高かった。

 ハードそうな練習だ。


「おまえにも五人張り付いているしな。ちょっとマシになったんじゃない?」

 和木は言った。

「正直インハイ目指してるのって先輩らなのに、1年3人以上出して意味あると思う?」

 ないと思うんだけど、というと。

「スタメンじゃなくていいだろ。その年にインハイに行ったって肩書だけでも大事なんだよ」


 うえーい、肩書。

 僕のもっとも嫌いなやつだ。


 小学校の時、僕は初めて肩書を得た。

 肩書って言っても、小学生らしい、その名も「生き物係り」


 僕は生き物って苦手だった。

 人間だってわからないのに、人間ほどの知能もない動物や生き物と関わりたいなんて思ってなかった。

 でもめんどくさそうなことを押し付けられたんだ。


 ウサギ小屋の早朝の水換え、エサやり。

 放課後のうんち掃除。

 真面目な僕は、仕事だから毎日お世話させて頂いた。


 ウサギの鼻がひくひくして、その度に髭も動く。

 かわいいか、これ?

 食べるわけでもないんだから、野山に帰してやった方がいいのに。


 仕事だから、その役割をこなした。


 でも半年もしないうちに、ウサギは死んだ。

 先生は森君が可愛がっていたウサギが死んでしまったと皆の前で言った。


 別に可愛がってなんかなかった。

 死ぬんだったら、山に捨ててきてやったらよかった。

 そう思った。


「森君、かわいそう」

「つらかったね」


 クラスの女子が僕をなぐさめた。


 いや、だから可愛がってなんてなかったのに。

 それなのになんだか、僕は悲しくなって泣いた。


 役割が人をつくるって、あれは催眠だ。

 人に被せる仮面みたいな催眠で、

 それを演じ続けていたら、いつのまにか別の自分になってしまう。

 抵抗感があるんだよな。


「和木くんは、肩書って好き?」

「嫌い」

「なんかある?」

「7代目和木組組長」


 あれ? 華道の流派って、なんとか組っていったっけ?

 あれ?


 僕が目を白黒させているので、和木は笑った。

「和木君家って、華道の家元だよね?」

「表面上ね。花は好きだし。

 ――でも僕が生まれ持った肩書は、7代目和木組組長」


 僕は絶句した。

 和木のことを知りたいと思ったら、

この人から出てくること、出てくること、――すべてがヤバい。


 でもなんかさ、あんまりそんなことって

 人間関係には関係ないような気がしていた。


「オタクの青春は異世界転生」:2020年9月23日

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