サブタイトルとか、必要か?
すみません。
だいぶん楽しみながら一人称を描いています。
嫌いな方は読まないでください。
おそらく今の真面目な部分の異世界転生ネタは、立ち消えます。
ただ気分転換に楽しいので、これはこれで気ままに進めます。
※
「じゃあ軽く走る前に、ウォーミングアップやっとくか」
中学から運動部だった者には、なんの衝撃でもなかったかもしれない。
けれど一周1260mもある運動場を、いきなり10周いっとくか、なんて言われたら、気分はムンクの叫びで白目をむく。
嘘だろ?
10周? 1周だってきついよ。
僕は心の中だけで精一杯反論する。
それなのに僕の横で、僕の常識は完全に否定された。
「軽いな」
「結構一年をなめてやがる」
声に出さ無い自分の抵抗とは別に、黒田コウと和木ヨースケがそう言って、笑いながら、ーーそう笑いながらってのが嫌味なんだよ。ウォーミングアップを始めていた。
「お前も、余裕だよな」
黒田コウに真っ直ぐな視線で問いかけられ、僕はじっとりとした汗をかく。
すまん。君達と肩を並べられるのは、身長しかない。
ポリポリと顎をかいて、僕は小さい目をより小さくした。
誰かーー教えてくれ。
バスケって身長以外に、要るのものがあるのか!?
そういえば、○○の空の主人公は小さかった。
身長で鬼の首を取ったように感じていたのは、素人の浅はかさか?
他の一年もウォーミングアップを始めている。
で、ウォーミングアップって、どうすりゃいい!?
ターンタララッッタラ、ターンタララッターターラーー、で始まる、小学生の時にスタンプ欲しさに参加した、ラジオ体操しか僕は知らない!
科学のウォーミングアップといえば、試験管やビーカーの温度を調整したり、不確定要素が入ら無いようにRO水で用具を洗うことだ。
僕の体はビーカーや試験管ではない。
でも割れ無いように、メンテナンスしなければならないのか!?
ターンタララッッタラ、ターンタララッターターラーー。
これしか思い浮かばない。
「伸びのびと背伸びの運動から、リキまない程度、軽く手を握って、腕と足の運動です」
よっしゃ。
オタク心をそそるスタンプラリー。
スタンプ欲しさに、眠い目を擦って参加したラジオ体操がきっと役に立つはずだ。
これならば、一曲目だけじゃなく、二曲目までいけるぜ。
腕は軽く横に振り、足軽く横に曲げーー。覚えているフレーズ通り体をほぐす。
その様子をみた黒田はクスッと笑って、コートヘ走っていき、和木が「おまえ真面目?」と眉根を寄せた。
ウォーミングアップってラジオ体操のことじゃない!?
騙された敗北感で、暑い夏、足しげく通った公園と、集めたスタンプラリー制度を恨んでみる。
僕はさ、オタク街道まっしぐらだった。
子供の頃からこだわりが強くて、共働きの両親はオンライン環境という途方もなく広く開いた窓を、子供に対して規制なしで、開きっぱなしの家庭に育った。
知りたいことは、オンライン上に落ちている。
ツールを器用に使いこなして、乗り越えられる部分は、乗り越えてきた。
中学校の時は引きこもったが。
これだって!
うちの親は引きこもっても、さほど責めてこない。
よく言えば、放任主義。
現実は、それほど子供に関心がない。
そんな環境なら、引きこもったもの勝ちだって思っていた。
気張って入部届を出したものの、集団行動の部活って難しい。
いきなり、〇〇のバスケのルカになれるわけではなく、現実はすでにルカみたいな男がいるのだ。
家に帰って、自分の思いをぶつける相手もないから、SNSのなろう系にエッセイを投稿した。
タイトルは「リア充にラジオ体操は受け入れられず」だ。
できることなら、かっこいいウォーミングアップを教えてくれ。
カエルのように足を開いた自分を思い出し、赤面して、ベットの上を転がり回った。
黒田コウや、和木ヨースケは、そんな感じじゃなかったよな。
そんなことを考えながら、僕は眠りについた。
夢はカエルの解剖実験。
カエルになっているのが自分で、ああーー。
僕はカエルでしかない現状。
ーーなろう系の反響は、ゼロだった。
「オタクの青春は異世界転生」
サブタイトルとか必要か?:2020年9月3日
この話も、生きていたら続きます。