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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
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そこカレーじゃないの?

一日一章気ままに投稿してています。


応援よろしくお願いします!

        ※


「お前、料理できんの?」

「和木君て、料理できるんだ」


 積み上げられた10人分の食材を前に、

僕たちは同じことを探り合った。


「お前なぁ、できなきゃ作るなんて言わねぇ」

「僕だって家で作ってくれる人がいないから、調理担当なんだ。

 ーーひょっとして和木君も?」

「いや、日頃はつくらねぇ。お前んとこの家複雑そうだな」

 いや、そんな複雑じゃないけど。

 母が家事ダメなだけで。


「とりま何つくる?」

 僕たちは用意された材料を確認した。


 玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、牛肉

 そして見慣れたことのある四角い箱!


 ああ、ね。

 てっぱんじゃないか。


「ビーフストロガノフか」

「カレーだね」


 はいぃ??

 なんですか?

 ビーフストロガノフって? 

 完全にカレー粉って書いた四角い箱、無視してますけど、この人。


「森、米を洗って炊いといて。

 あとそこにあるパンは、サイズに切って焼く準備、ガーリックオイルも作って」


 なんですか、この仕切り方??


 いや、仕切られるのに慣れているし、

 命令されるの僕好きなんだけど。


 だって自分で考えて行動するより、

 人に命令されたことだけこなす方が楽だもん。


 よし、ここはビーフストロガノフ!?

 って料理に期待してみよう。


「ワインがねぇ、日本酒で代用するか。あっ生クリームもねぇ。牛乳で我慢するか」

 和木がぶつぶつ言いながら、

 まな板の上で玉ねぎを薄切りにしていく。

 

 シュタタタタ!

 あっという間に玉ねぎ10個が下処理され、

 その手つきの良さに、一瞬見惚れた。


「おい、森早くしろよ。飯は炊くの時間かかるからな」

「うん」

 そうだ、僕は兵隊にならねば。

 はい、和木長官!


 食べ盛りの男十人だ。

「何号炊きますか?」(長官!)


「パンがあるとしても15号ぐらいは炊いておこう」

「とすると炊飯器3台は出動ですね」

 長官と部下になり切った僕の口調が変でも、

和木は全く気にしていない。


 僕が米を洗っている間に、

 和木はじゃがいもをラップに包んで、レンジに入れている。

 やりますね長官、手早いっす。

「パンと飯の準備終わったら、ジャガイモ皮剥いてマッシュにしといて」


 マッシューー。

 Googleタイム。

 あ、マッシュポテトですね。

「承知!」


 そんな感じで僕たちは、和木が割り当てた作業をこなして、

なんとかかんとか調理を終えた。

  

 所要時間きっかり30分。

 10人じゃなきゃ、

 こいつキューピー3分クッキングみたいに作れちまうんじゃ?


 サラダ、ガーリックトースト、マッシュポテト、

 そして美味そうなビーフストロガノフ。

 飴色にとろけた玉ねぎに、牛肉が蕩けそうに柔らかくなっており、

 おしゃれーに生クリームのように牛乳でラテアートされている。


 腹をすかせて再び食堂に戻ってきたバスケ部員たちが、

少女漫画さながらに目を輝かせたのは言うまでもない。


「うわ、すげっ」

「うめーこれ、超うめー」

 本当に美味しかった。

 天国の味がした。


 僕はいつも自分で作ったご飯を、自分一人で食べることが多い。

 両親が特殊な職業だし、兄弟もいないから、

 こんなふうに食卓を囲んで、

 作ってくれた料理を味わうなんて、

 天国だ。


「和木君、とっても美味しいよ」

 自然とね、満面の笑顔になってしまい、僕は和木に礼を言った。


「おう……。お前もアシスト、ありがとな」

 ーーあれ?

 僕から視線を逸らせて、和木が礼を言った。

 そして心なしか、顔が赤い。


 まさか、あの超絶クールで陰険な和木が、

 照れている!?


「今日は足りないもの多かったから、明日は食材ちょっと足しに行こうぜ」

 和木が言った。


 こいつ、もしかして結構いいやつ?

 口や態度は横柄だけど、ここぞって時にチームのために動けるんだ。


 僕はちょっとだけ、和木ヨースケを見直した。 

「オタクの青春は異世界転生」:2020年9月20日

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