出家した気分
気ままに投稿してきました。
本日終了ー。
お付き合いいただいた皆様、誠にありがとうございます。
その後の3人の話はまた書こうかと思っていますが、それも気が向いたらということで。
偽りの神々シリーズでも、のちに主要人物として登場してくるので、気が向けば読んでやってください。
こっちとは少しテイストが違います。
「魔女裁判後の日常」くらいから、文字数を少なくして軽めに書いています。
和木と樫木が出てきます。
※
目を覚ました時、そこは森ではなかった。
僕、死んだのかな?
満点の星が見える。
それから体が、ガタガタと揺れている。
星に吸い込まれそうだ。
やっぱり僕死んだのかな?
またどっかに異世界転生しちゃった?
嫌だなぁと思った。
死にたくないと思った。
僕は結構この世界のこと、ーーいやチーム異世界転生のこと気に入ってしまっていた。
だから最初は長いなって思ってたけど、できれば三百年の寿命全うしたい。
前の世界じゃ、そんなふうに思ってなかった。
僕はきっと、二十歳の誕生日で死ぬかな、くらいに思ってた。
でも今は生きてたい。
あいつらと一緒に生きてたいんだよ。
死にたくないよ。
ツーっと涙が頬を伝った。
へ? 涙?
てことは死んでない?
しかもなんか、寝かされてる頭が生暖かい。
僕は起きあがろうとして、すぐに肩を押さえつけられて元の姿勢に戻された。
「あ、和木君」
それに、樫木も一緒だ。
みんな無事だったんだ。
僕は安堵の息をついた。
なんで満点の星空なんて見えるんだよ。
死ぬのかなと泣いていた僕は、現実に引き戻されて動揺する。
「ここどこ?」
「馬車の上、ついでに俺の膝の上」
和木はぶっきら棒に言った。
「あわわわ。ごめん」
和木君の膝枕なんて居心地悪すぎでしょ。
起きあがろうとして、もう一度寝かされる。
「いいって。もうちょい寝てろ」
声色が優しい。心配かけてしまったらしい。
「森君、ごめん。森君止めてくれへんかったら、わい、リオナにとんでもないことするとこやった」
「え? うん、いや、僕大丈夫ーーだったし……」
森君に土下座されて、僕は手を振った。
「さすがに火だるまになった時は、もうあかんおもたんや」
「でもおまえの耐火用の服、不細工だけどすごいのな」
珍しく和木が褒めた。
そうか、僕宇宙服ぐらい分厚い、耐火用の衣服着込んでたんだった。
「燃えたの髪の毛くらいだもんな」
えっ!?
狼狽えた僕が頭を触ると、髪の毛がない。
ほとんど坊主になっていた。
なんか出家した気分。
「髪の毛一瞬で燃えてしもうたんやけど、すぐに和木が消火してくれたから、顔も頭も無事でほんまよかったわ」
樫木は涙ぐんでいる。
「リオナは?」
「ちょっと火傷しているけど、無事。馬車引いてくれてる」
そっか。
皆が無事ならまあいいや。
髪の毛なんてまたすぐ生えてくるしね。
「クエスト大失敗?」
「そうだな」
和木は肩をすくめた。
僕やリオナが火傷しているので、薬が必要になって、キコアイン一族のリーインリーズ伯爵の元に戻ることにしたのだそうだ。
「わい、あいつ絶対許さへんで。絶対リベンジしたるからなぁ。ーーわい、何年かかっても、あいつ仕留めるって決めた」
煮湯を飲まされたと、樫木は息巻いている。
「あーあ。でもこれで報酬はゼロなんだ」
僕は骨折り損のくたびれ儲けの旅になったことに、ため息をついた。
すると和木は、「そうでもないさ」と皮の袋をチラつかせた。
「火の低級精霊!?」
「ああ、戦った後にいっぱい飛び散ってたから拾っておいた」
抜け目ないな。さすが守銭奴。
僕は、ははははっと声を出して笑った。
もしかするとこの先、また予期せずに死んじまうかもしれない。
そしてまた媒介人になって、他の世界に飛んてしまうかもしれない。
ーーでも、この異世界に繋ぎ止めるものがたくさん出来た。
僕らは、チーム異世界転生。
この先の未来はまだわからないけれど、きっと僕らは必死で生きていく。
「何ニヤニヤしてる、森?」
「僕に彼女が出来たら、和木君は妬くかな?」
和木が僕のこと信頼して、黒田みたいに僕に依存する未来もあるかもしれない。
だって僕のこと、必死で救助しようとしてたみたいだし。
今だって愛想は悪いけど、膝枕してくれてるし。
和木の膝の上で楽しそうにしている僕を、和木は冷たい眼で一瞥した。
「ヤキモチねぇ」
鼻で笑う。
「ていうか、おまえのそのめでたい脳、一回焼かれて、焦土と化しておいた方がよかったかもな」
「オタクの青春は異世界転生」2020年12月5日
異世界転生とは?
青春とは?
そもそもオタクって?
みたいなノリで書き始めて、やっと終章。
書いてて楽しかったです。
評価、感想、励みに今後も気ままに投稿していこうと思います。