未送信メール
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
あの日茜を置き去りにしてから、自分は一人で行動した。
同級生に揶揄われるのも嫌だったし、親が婚約者を決めてるのなんておかしい。
だからキスしても全然いいっていう茜は変だ。
いろんな理由があって、自分は茜を遠ざけた。
でも一番嫌だったのは、身長が並ばれそうだってこと。
『アキは強いから』
そう言ってくれる茜は、自分よりもか弱くて、小さいお人形のような女の子。
なのに彼女に身長抜かれるとか、絶対に嫌だった。
ロードバイクで駆け回って、男友達と遊ぶ事にした。
強くなるために、神社の修行も怠らなかった。
身長伸ばしたくて、バスケ部にも入部した。
茜が何か話しかけようとしても、忙しいと拒絶した。
それでも、いつも心に中に引っかかっていた。
茜の存在。
家業からも茜からも解放されたくて、高野山を下山してバスケに打ち込もうとした。
背を向けて逃げて、忘れたくて。
茜からは度々、LINEが届いた。
「ねぇアキ。
お父さん心配してるよ。
もうそっちの学校行くこと認めてるんだから、
たまには顔見せに帰ってきなよ。
私もアキに会いたい。」
既読スルーした。
「アキ。
バスケットは楽しい?
地区予選、バスケットで勝ち抜いてるってニュース見たよ。
次は応援に行くから、連絡してね」
既読スルーした。
インターハイに向かうバスの中で、自分はスマホを握りしめていた。
茜にスタメンじゃないけど、インターハイに出られるってことを報告しようかどうしようか迷っていた。
スモールフォワード(SF)は黒田のポジションだったけれど、先輩が彼にフォワード全般で攻めろと言って、彼の後退要因として、自分も試合に出ることが許されている。
バスケでインハイ出れるってことは、少し自慢できることだよな。
だから、茜に連絡しようか。
もしかしたら、昔みたいな関係にまた戻れるかもしれない。
何度かラインを打っては消し、打っては消した。
「茜、久しぶり。
今インターハイの一回戦で戦うために、バスで山梨向かってる。
ごめんな、ずっと無視してて。
試合見にくるか?
わいもお前に会いたい。」
その時だった。
ドガンというスザまじい衝撃音と振動がきて、自分の体が宙に浮かんだ。
その後は、真っ逆さまに落下する。
スマホが自分の手を滑り落ちた。
なんだ?
何が起こった?
わい。
まだ送信しとらんのに。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年12月5日