仲間なんて妄想かもな
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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こんな時間だから部屋で寝ているはずなのに。
2階の居住区の扉をバンと開いた時、僕たちは言葉を失った。
縛られて、天井から吊るされている店主。
こういうの、何縛りって言うのか。
ロープで身体中が固定されて、口にすらロープが咥えさせられている。
「どうしたんですか?」
店主から必死で助けを求める視線を向けられて、僕は一歩前に踏み出したが、和木がそれを止める。
「罠だ。気付かれた」
罠って言ってもさ。
目に涙溜めながら恐怖に顔を引き攣らせて、天井から吊るされてる人、早く降ろしてあげないと。
僕が手を伸ばそうとするのを、和木が止めていた。
その瞬間、助けてと声にならない叫びを、目力で訴えていた店主の体が火だるまになる。
涙を溜めていた目が、炎に包まれて白目を剥き、開き切れないほどの絶叫を、裂けた口が表現する。
僕は手を虚空に伸ばしたまま、固まっていた。
「あいつは囮だ」
和木は冷静だった。
樫木は僕にわからない呪文を口にしている。
僕には違和感しかない。
なんでこいつら、目の前で人が燃えているのに、妙に冷静なんだろう。
僕は、こんなの……。
「完全に読まれてたようやな」
「そうだな」
樫木が悔しそうに舌打ちして、和木が答える。
「脱出しないと、ここ燃え落ちそうや」
樫木が僕の手を引こうとする。
でもあの人、放っておいていいの?
炎に焼かれて、狂死させていいの?
僕は背中に背負った消化器を、丸焦げになりそうになる店主に向かって放出していた。
考えるよりも、それは本能に近い救助活動だ。
「森君、あかんで。そんなことしてる間ないんやわ」
樫木の焦った声は聞こえている。
でも、人間の命ってこんなに簡単にに捨てられない。
僕は逃げようという、仲間の腕を振り払って、消化器を振りかけた。
その時。
ズガーン。
この世界も、前の世界でも現実で聞くことはなかった音が、鳴り響いた。
和木が火だるまになる男に向かって、向けている。
それは銃口。
苦しみ悶える火の塊は、一瞬で動かなくなっている。
和木、それ何?
それ拳銃?
どこからそんなの?
火と煙に囲まれて、遠のきそうになる意識の中で、僕は和木に質問している。
隠してたのかな?
その拳銃、今まで隠してたのかな?
和木に手を引かれて、呉服屋の階段を滑り落ちるように移動しながら、僕は違和感に囚われていた。
どうして隠していたのかな?
「なんで!?」
樫木が先頭を走り、和木が僕の手を引いて外に出た時、僕は和木の手を思いっきり振り払った。
「なんで、そんなの持ってるって今まで言わなかった!?」
僕の背後で、火事になって呉服屋が崩れ落ちる。
そんな建屋から、着物じゃなくて、僕を全力で連れ出してきてくれたのはわかっている。
でもなんで、今の今まで、銃なんてモノ持ってるってこと、君は隠していだんだよ!?
「和木君? なんで!?」
僕は命からがら逃げ出してきた興奮感も冷めていなかったと思う。
肩で息をしながら、息を整えるようにしながら、和木の着物の端を掴む。
和木は冷たい顔で僕を見た。
「ーー信用してなかったからだよ」
僕から眼を離して、和木は抑揚のない声で言った。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年12月3日
今日は組み立て家具に押し潰されて、続きを夜まで書けなかった。
家具っていつの間に、自分で組み立てなきゃならなくなった!?