夜襲するぞ
気ままに投稿しています。
今日は昼休憩がなくてUPできなかった。
お付き合いよろしくお願いします。
※
和木は何故だか着物を着ていた。
「動きにくくないの?」
夜襲に行くのに、そんな格好。
僕の質問に和木は、「別に」とそっけなく答える。
着物を着て日本刀を保つ和木は、なんだが僕が寄り付けないほど、いつもと違う空気感を纏っている。
結局僕が用意した耐火用の服は、和木は動きが遅くなるし不細工すぎると身に付けなかった。
樫木はちょっと遠慮がちに、腕だけつけとくなぁと歩み寄ってくれたんだけれどね。
いつも思うが、和木のツンデレぶりは、ーーツンツンぶりは、女神以上だよなぁ。
まあいいけど。
僕はゴーストバスターのスノーマン並みの装備、つまり月に行く人間ほどの宇宙服で、火に対して耐性を得られるようにしていた。
「森君、…………」
ーー何言ってるの?
「だから…………」
聞こえないよ。
「…………、お前な!」
はぁ?
和木と樫木がこれはダメだと言うように、肩をすくめる。
完全防備にし過ぎて、彼らの音声が聞き取れなくなってるみたい。
僕はヘルメット状にした毒ガスマスクをスポッと脱いで、「何?」と聞いた。
「いや、もういい」
「だな」
二人はなんだか、諦めたように言う。
「こうなったら、ジェスチャーでわかるようにしよう」
「そうやな。どうせ忍び込むんやから、むしろそれでいいんやないか」
和木と樫木はうなづいた。
僕たちは今、呉服屋の前の路地裏に隠れて、ジリジリと呉服屋に近づいていた。
リオナは神楽坂の兵と一緒に待機しているので、僕達は3人で夜襲をかけようとしていた。
夜襲なんてかけたことないから、和木と樫木が動きやすい格好を選択したことに異論はない。
でも万全の体制を!
そう思った僕は、なんだろう。
関節がロボット並みにしか動かないので、ポンコツな鉄人○8号並みの動きしかできない。
「いくで」
樫木は音頭をとった。
僕らは、こくんとうなづく。
特殊戦闘部隊さながらに、樫木が手の甲を下にして、四本の指でくいくいと合図する。
僕らは忍者さながらに気配を消して、呉服屋に近づいた。
玄関の扉ではなく、裏側の扉はこの世界では施錠が甘い。
施錠自体、ちょっと力を加えれば開くくらいの脆さだ。
僕らは裏口から店内に入った。
「この主人が悪党だったら、この着物没収だよな。ーー全部もらっていいかな」
和木がボソッと、つぶやいていている。あくまで着物欲しいみたいだ。
私利私欲出してくるあたり、こいつ余裕だなと僕は苦笑する。
薄暗い店内の上が居住区だった。
僕らは2階に続く階段を登った。
息をひそめているのに、心臓がどくどくして、僕たちは緊張した。
ついに、火の妖魔使いと戦うことになるのか!?
僕らは2階に上がって、居住区の扉を破った。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年12月3日