正座って足が痺れるもんだよな
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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この世界に来て見て、僕が会った権威のある人、三人目との対面はもうすぐだった。
一人目は最初初めて人を見た村の村長。
二人目は神の一族の女神、リーインリーズ伯爵。
三人目が倭の国の王だった。
王は純和風の城に住んでいた。
王というよりは、殿と呼んだ方がしっくりくるような城である。
僕たちは王様に会うために畳座敷の上に正座して待っていた。
こんなに正座させられたのって、おばあちゃんの通夜以来だよ。
痺れてくる足をさすりながら、僕は周りを見回した。
「やっぱりこの国の文化、どう見ても日本から伝わってきたものだよね」
「見てみい、これ柱に家紋入っとる。瓦のとこにも菊の紋入っとたで」
菊の紋?
僕がわからない顔をしていると樫木が教えてくれた。
「八戸菊を図案化した菊紋である十六葉八重表菊は、天皇とか皇室とか表してるんやで」
さすが神社の跡取り。そういうことは詳しいみたいだ。
「じゃあ、殿ーーもとい王様は天皇家の出身ってことなのかな?」
「そうともいえないんじゃない? 象徴的に家紋使ってるだけかもしれないし」
御前に王が来るまで、僕たちはキョロキョロしながら色々なことを話していた。
「王のおな〜り〜」
臣下がいきなり声を張り上げた。
緊張すべき場面だったのに、僕は吹き出した。
僕は笑いのツボに入るとやばい。
このままでは、失礼すぎて手打ちにされるかもしれない。
辛抱しようとしても難しい。
その様子を見た、右隣に座る和木が、僕の足をつねった。
ずっと正座していたせいか、足痺れてたんだよね。
「ひゃっい」と言って僕は前につんのめった。
笑いは止まったけど、土下座する格好になる。
いいよね、神主修行した人も、花道の家元出身の人も、正座に慣れてるんだから。
二人とも涼しい顔で、堂々としている。
僕が土下座するタイミングで、二人も軽く頭を下げた。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年12月1日