渡に船だよ
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
武器は樫木君の呪術、和木君の刀、僕の消火器。
この三種類しかない。
防具は、ガスマスク、耐火ボードの盾、もう一つ耐火素材の服だった。
軽量化は難しいけれど、狙われやすい腕、腹、足に巻き付けておく形でもずいぶん違う。
僕は得意げに全部を身に付けて、和木と樫木にお披露目した。
「うわ~」
「限りなく不細工だな」
和木の審美眼的にはNGらしい。
僕を見る目はもはや人をみる眼差しではない。
そうは言うけどね!
もし原液ぶちまけられたらヤバいし。
他にも科学薬品で怖いモノ、いっぱいあるんだよ。
硫酸、かけられたら溶けるし。
エチレングリコールは飲んだら腎障害引き起こすし。
(しかも味はコーラみたいなんだよ)
「相手に科学の知識がある限り、油断できないんだって」
「しかも魔術師。強烈やわなぁ」
「呉服屋の家族は4人だったらしいけど、兄貴の方は行方不明で、今は三人くらしだったけ?」
少なくとも、敵の数は把握したかった。
「組織だったらヤバくない?」
和木が言うと説得力あるよ。
「そうだよな、圧倒的にこっちの方が不利になる」
「相手組織だったときって、どうやるのが普通?」
「そりゃポイント的に襲撃して、仲間が集まってこないうちにずらかるってのがテッパンだけど。警察来るまでの勝負だよな」
警察か。
前いた世界じゃそういうのあったよな。
この世界じゃどうなんだろ。
倭の国っていうだけあって、王様とか兵隊とか、警察組織に代わるものがあるなら、手伝ってもらった方がいいんじゃないかな。
そうだ、王様に謁見しに行こう。
ちょうど思いついたところだった。
宿の店主が、ノックをして部屋の中に入ってきた。
「お客さん、大変だよ。あんたたちがこの病気を治したっていうのが有名になって、王宮から迎えが来てる」
わぉ。
渡りに船とはこのことだった。
僕たちは顔を見合わせて意思確認し、同時にうなづいた。
行こう!
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月30日