反撃開始だ!
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
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憎たらしいやつだけれど、和木の生還は僕達に力を与えた。
和木の身に起こったことを和木に話して、その理由を僕なりに推測する。
やっぱりあの呉服屋があやしい。
発疹が引いてきた和木に、僕は質問した。
「和木くん、着物を買った呉服屋で、なんか触らなかった? もしくは変な匂い嗅がされなかった?」
でも匂いだったら、僕も一緒だったから、匂いじゃないかな。
「右の掌が一番酷いよね、発疹。その手でなんか触ってない?」
僕に言われて、和木は首を捻って考えている。
そして「そういえば」と思い当たることを口にした。
「森がさ、あのアルビノの男の子と会話した後、その子がなんかお前の頭に向かって投げつけようとしたんだ、小石みたいなの。ーー飛んできたそいつを右手で握ったな」
と和木は言った。
「いやでも、最初すごくお前に懐いて話しかけてきてたのに、森が途中から余所よそしい態度取ってたから、小さな石だったし、子供の腹いせぐらいに思ってたんだけど……」
「それだよ!」
僕は声を荒げた。
毒ガスを吸い込んだだけなら、あそこまで症状重くならない。
樫木もリオナも回復した。
診療所に詰めかけている同じ症状が出ている人達にも、僕は除去の方法を伝えまくって、死人は一人も出ていないんだ。今、リオナは除去方法をどんどん広めて、住民の治療をしに奔走しているから、住民も回復に向かっている。
症状重いのは、断トツで和木くんだった。
きっとその小石のせいだ。
ーーえ?
じゃあ命狙われたのって、もしかして僕だった!?
和木はその身代わり?
「うわっ、ごめん僕の代わりに死にかけたんだ」
いや、一回死んだって言ってたっけ。
「死なせてごめん。でもーー、あの子供がなんで僕を!?」
「それなら心当たりありまくりやんか? だって森君、ここに来た日、和木と呉服屋行ってきてから、めちゃ顔色悪かったやろ? その子供となんかあったんやろ?」
「そういえば、毒のある鉱物の名前ばかり口にしたって、気にしてたよな」
樫木と和木にそう言われて、僕は思い出した。
そうだ、僕はあの子供が毒の鉱物の名前ばかり言ったから、怖くなって彼に背を向けた。
子供なのに、なんでそんな鉱物知ってるんだって、異様さにたじろいだんだ。
まるで僕たちがいた世界を知っているかのような子供だった。
それってあっちからしても、そうだった?
僕が鉱物好きだって耳にしたから。
わざと毒のある鉱物の名前を口に出して、僕の反応を探ってきた?
それで僕が彼と同じ知識量があると判断して、ーー殺意を抱いた?
ああ。そうかもしれない。
僕もあの子供の存在は脅威だった。
前の世界の科学の知識を、この世界で悪用したらどうなるって考えてた。
「和木くん、樫木くん、敵がわかったよ」
アルビノの、あの子供だ。
リーインリーズが言ってた魔物。
そいつを討伐に来た僕たちの視線を逸らすために、あの子供が毒ガス撒いて、僕らを牽制してきたんだ。
僕はとてつもなく腹が立って、心の底からムカムカした。
危険な毒ガスを人に使うなんて、もっての他だ!
たまたま誰も死ななかったからよかったけど、子供が扱っていいものじゃない。
危うく命を落とすところだった和木。
その仇は絶対に打ってやると僕は決めていた。
「反撃を開始するよ」
僕は立ち上がった。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月29日