表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
127/144

眠れる美男子の毒舌

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

        ※


「イチ、二、サン、シ、ゴ、ロク、ナナ、ハチ」

 30回の胸骨圧迫、つまり心臓マッサージをする。


 それから和木の鼻を摘んで、ふーと人工呼吸で彼の体に空気を吹き込む。

 もう一回、長い息で、空気を送り込む。


「気道確保」

 和木君、戻ってよ!


 青ざめた顔はもう、死んでいるようにすら見える。

 諦めないよ、僕は。


「もう一回! イチ、二、サン、シ」

 腕を真っ直ぐに伸ばして、僕は和木の胸に手を当てて、心臓マッサージを繰り返す。

 絶対に諦めたりなんかするもんか。


 何度だって繰り返す。

 和木君、戻ってきて!!


 なにスカした顔で寝た振りしてるんだよ、バカやろー!

 摘んでいる鼻筋まで、綺麗に整いやがってさ。

 僕じゃ黒田の代わりにはなれないかもしれないけど、頼むから和木君。


 もう一度人工呼吸を繰り返す。


 その時、バチっと和木の目が開いて、僕と目があった。

「うわぁあぁぁ!」

 僕が相当狼狽えたのは言うまでもない。

 少し水を吐き出した和木は、軽く頭を振って、半身を起こした。


「和木君!!」

「やったで森君!」

 僕は生気が戻った和木の首にしがみついた。

 その横に樫木が走り寄って、ぴょんぴょん跳ねている。

「やったで、ようやったで森君!」

「よかったよぉ」

 僕は情けないけど、和木の首筋にすがりついて、泣きじゃくった。


 全身の力が抜けて、子供の頃に戻ったみたいに、わんわん声をあげてしまう。

「バカやろ、心配かけやがって。ほんとバカやろ、死ね」

「ああ、死んでたな」

 冗談言ってるし。

 本当に腹が立った。

 でも安心した。


「森、樫木、ありがとうな」

「森君、すごい頑張っとったんや。息しとらんかった時は、おしっこちびりそうやったで」

 そうか、と目覚めた和木は、相変わらず嫌なほど冷静だった。


「ーー黒田、生きてたよ」

「何やて?」

 僕と樫木は前のめりになった。


「バスケやって、インターハイに俺ら連れて行こうとしてたわ」

「てことは、黒田君はバスの事故で死んでなかったてこと?」

「そう。あいつはちゃんと生きてた」

 僕はまた泣き出した。

 感情が昂って涙腺が緩みっぱなしだ。

 樫木君も鼻水だか涙だかわからないぐらい、ブサ顔になって嬉し泣きをしている。


「会えたんだ、黒田君に」

 よかったね、和木君。

 それがずっと気がかりだったのだろう、何だか和木の顔はとても穏やかだ。


「俺の病気、おまえ治してくれたの?」

「いや、病気じゃないよ。これ人為的に」

 いや、今はもう何でもいいや。


「戻ってきてくれて嬉しいよ」

 黒田のとこにずっと居ようなんて、変な考え起こさずにいてくれて、ほんと嬉しい。


 僕の方を見て、和木は悪戯っぽく笑った。

「お前、俺のこと、うるさいくらい呼んでただろ?」


 うるさい、って何!?


「お前の声うるさすぎて、仕方ないからもう一回戻ってきたよ」

 憎まれ口を言う。


 くそ。

 僕と樫木は、顔真っ赤にして猿みたいになってるのに、こいつだけは綺麗なまんまだ。


「ただお前、目を覚ました時にお前のブサイクな顔見て、もう一回死ぬかと思った」

 僕は和木の首を締め上げた。


 童貞の僕の、大事なファーストキスを返してくれ。

「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月28日


クライマックスに向かって頑張るぞ。

評価もらえて、更に元気出た。

応援よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ