和木再び
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
ルールは一緒だ、1ゴール1ポイント。
先に5点入れたら勝ち。
でもさっきのワンオーワンと違って、今回は一対三なんだ。
圧倒的にコウが不利。
またコウはディフェンスから開始することになった。
三人はボールをパスしながら、コウを弄んでいるように見える。
さすがに、これじゃ勝ち目ないよ。
アイはスポーツタオルを膝の上でぎゅっと握った。
相手はすぐにワンゴールを決めてしまった。
次はコウが攻める番。
うまくディフェンスとのズレを作り出して、コウはなんとか一点を決めた。
ファーストポイントは引き分けだ。
山梨第一の攻撃、パスを繋いで、すぐにセンターまでボールが運ばれてしまう。
コウはブロックしたけれど届かなかった。
コウの身長が伸びたと言っても、まだ180センチまではいっっていない。
和木とか森なら、きっとこのセンターを止めてくれたのに。
アイは奥歯を噛み締めながら、そう思った。
未来にこの世界の未来の記憶を持っていってほしい。
コウの気持ちは痛いほど、よくわかる。
でもここに、あんたのチームメイト、もう誰もいないんだけど。
そんな状態で、一対三とか無謀だよ。
次のコウの攻撃、水城にボールを奪われた。
センターにパスを回されて、ゴールを決められる。
一点を先取され、次も山梨第一の攻撃が決まる。
あっという間に得点は、3点対1点。
絶体絶命だと思ったその時、
体育館扉の外から、長身の男が入ってきて、アイの横を通り過ぎた。
コウと同じユニフォームを着て、コートの中に入っていく。
長身で肩の上まで伸びた長い髪の毛、真っ直ぐに伸びた手足。
圧倒的な存在感だった。
「タイムーー!! タイム、タイムタイム!!」
アイは叫んだ。
和木洋介だった。
自分を鬱陶しそうに睨んでくる、お世辞にも感じがいい男とは言えない、身長190センチほどある大きな男。
死んだはずの彼を見てしまったアイは、叫ばずにはいられなかった。
「相変わらず、バスケしてるんだ」
コウは一瞬息を飲んで、目を見開いている。
それでも同じユニフォーム姿で立っている和木を見て軽く笑った。
「おまえもやる?」
「いいよ。おまえがバスケするならやってやるよ」
コウが右手を肩の高さに上げると、和木がその横を通り過ぎるように左手でタッチした。
「やるなら勝つよなぁ?」
和木が煽るように言って、打ちのめされそうになっていたコウの熱量が上がる。
当然だ、と言わんばかりに闘志を燃やす目つきに変わる。
「司令塔、で、どうよ?」
「軽いな」
それからは一気に形勢逆転した。
和木は頭脳プレーヤーだ。
見事にパスを回すタイミングをズラして、相手チームのペースを崩しまくっているように見えた。
結果は5対3で、コウ達の勝利。
「ありがとうございました!」
大きな声でコウは頭を下げて、相手チームに礼を言った。
何か吹っ切れたような顔をしている。
アイは感動してコウの側に駆け寄った。
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月26日




