表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
123/144

ファーストキス

気ままに投稿しています。

お付き合い、よろしくお願いします。

        ※


 和木の魂がここにない。

 和木の生還を祈りながら、車輪を回して発電している僕には、それがはっきりとわかっていた。


 和木は料理は好きだった。

 でもリーインリーズにどれだけ重宝されても、料理人としての生活に魅力は感じていなかった。

 僕が刃物って言う、和木が好きなものを錬成すると興味を引いたから、僕と一緒に料理人を続けていただけだ。


 和木はきっと黒田コウが目の前から居なくなった時点で、生きる目的を半分見失っているように見えた。

 

『寿命が長いとか、どう思う?』

『可能性が試せるなら、いいんじゃない』

 和木はそう答えたけれど、多分それは黒田コウに再び会える、可能性のことを言っているのだと僕は思った。

 朦朧とする意識の中、和木が口にした言葉は、「クロダ」である。


 バスの事故で、彼は黒田の消息を確かめる時間がなく、目の前にいる僕と樫木を優先してくれた。

 けれどずっと、ーーずっと気がかりだったのだろう。

 和木が弱って初めて、気づくことがあった。


「なぁ、和木くん風呂に入れてもう3時間経つで。わい代わるわ」

 樫木が僕の頼りない車輪を回す手を取ってくれるが、僕はその取っ手を離すことはできなかった。

 この取っ手離したら、和木をここに繋ぎ止めてるもの、全部断ち切ってしまうようで、僕は一歩も引き下がれない。


「大丈夫。まだ回せるよ」

 額に脂汗が浮かぶ。

 ここが正念場なんだよ。


 それなのに僕の頑張りはあまり和木に届いていないようだった。

 肩から下を裸体で水に浸しているけれど、回復の兆しが見られない。


 マスタードだったらさ、致死率は低いはずなんだよ。

 なんでこんなに、和木は回復してこない!?

 僕は何か間違ったのか?


 和木の発疹の一番ひどい部分は掌だった。

 まさか気化する前の毒を直接触った!?


「森くん、なんかやばいで!」

 樫木に声をかけられた。

 和木が痙攣し始める。

 頭だけ自ら浮かせるために、檜のヘリにタオルで和木の頭を乗せていたのに、水中に沈み込んで行く。


「和木!」

 樫木と僕は水中に走り込んで、和木の体を浮上させた。


 和木!

 真っ青な和木はビクリとも動かない。

「まさか、だよな」

「おい!」

 呼吸してない!!

「和木くん!」


 僕は諦めないよ。

 絶対に君を死なせたりしない。


「人工呼吸だ!」

 僕はアニメとかで見た見様見真似の知識で、和木の鼻を摘んだ。

 この際、ファーストキスの相手が和木でもいいよ。

 文句あるけど、助けるためなら、なりふり構わないよ。


 とにかく生き返れ!

 呼吸してくれ!

「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月26日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ