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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
118/144

人力で電気作り

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。


        ※


 治療方法の方向転換。

 僕は現代の人間だから、これが疫病でなくて人為的にもたらされた災害だと気がついたけれど、この国の人にとったら、たぶん訳のわからない病気に過ぎない。


 こんなことできる人間は、たぶん異世界、ーー僕達のいた世界を知っている人間で、そして倭の国の文化を築いた人間だ。


 呉服屋が怪しい。

 僕はあの少年の禍々しさを本能で察知していた。


「よっしゃー。風呂入ってきたで」

「どうもない? 大丈夫、樫木君?」

「わいは大丈夫やで、感染症やとおもて、外出る時にバンダナして息止めとったから。リオナにも同じようにしとったから、たぶん大したことない思う」


 よかった。

 匂いがすると言うことは、完璧な毒ガスではなく、恐らく致死量に達しないはずだ。

 完全に純粋なものになると、常温では無臭になるので、手の施しようがなかっただろう。


 次亜塩素酸。

 ノロウイルスなどの消毒に使うアレは、ハイターやブリーチのある時代だったら簡単に作成できるけど。

 水と塩を電気分解するだけでもできないことはない。


 問題は小さい量でも発電させなければならないと言うことだった。

「樫木君、馬車の車輪外しに行こう」

 歯車を回して電気を起こす方式を考えて、次亜塩素酸を作り出す。


 塩は持ってるし、必要な道具は揃っていた。

「風呂を次亜塩素酸に変えて、和木を入れる」

 僕は言った。


 意識混濁している和木を残して、僕と樫木は準備を整えに行った。

「これで助かるんやな?」

「ああ、たぶんこれしかない。和木の毒除去したら、その後は他にも調子悪い人をここに運ぼう。旅館の主人にも手伝ってもらうよう話してきてくれる?」

 あ、外に出る時は必ず、衣服で体を覆って防護マスクつけて、と忘れないように革製のマスクを渡す。


 僕は手回しで発電できる仕組みを、馬車の木の車輪を使って即席で作り上げた。

 即席だから、後は人力勝負だよ。

 ひたすら車輪を回して、次亜塩素酸に変えた水を、風呂桶に流し込んでいくだけだ。


「和木君、皮膚痛いだろ? すぐ楽にしてやるから、ちょっと待ってて」

 僕は意識が朦朧としている和木に声をかけ、肩を貸して風呂場まで連れて行った。

 僕や樫木と違って、和木の体は長身で筋肉質だから、一人で担いでいくのは重かった。


 でも土壇場で力を出せなきゃ、どこで力出すんだよ、僕。

 和木君には、今まで散々助けてもらった。

 僕らを守って、狼もどきと戦ってくれた。

 一人でバスに戻って食料とってきてくれた。

 美味しいご飯を作ってくれた。


 そんな和木を今助けられなきゃ、一生後悔する。

 折れそうになる体を必死で立て直して、僕は和木を担いで風呂場へ向かった。


 皮膚の発疹が広がって、水泡がじくじくと痛そうだ。

 僕は、和木の衣を剥ぎ取って、水風呂に彼を入れた。


 力尽きるまで、全力で電気を作る!


「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月24日

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