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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
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毒ガスなんて除去してやる!

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

        ※


「あかん。氷水と布は用意してきたけど、医者呼べやんかった」

「なんで!?」

 帰ってきた樫木に僕は焦って声を荒げた。


「なんか病院内、和木と同じ症状の人ごっつういるみたいで、封鎖されとるし、行列やし、ちょっとやばい状態や」

「えっ?」

 和木だけじゃない?

 てことは感染症は僕らが持ち込んだわけじゃなく、この国ですでに流行していたことになる。


「その人数ってどれぐらい?」

「そやな三十人はいたと思う、列になって診察待っとったで」

「どんな感じだった?」

「ああ、熱と呼吸困難があるって、あと水泡とか赤い発疹できとるって、家族の人が言うとったわ。昨日から突然なんやて」

 和木と同じ症状だ。

 昨日から突然って、そんな風疹や麻疹は存在しない。

 

「あかんわ、これじゃ魔物狩るクエストどころじゃのうなってしもた」

「うん」

 その時僕はなぜか、アルビノの少年を思い出した。

 白蛇のように赤い瞳と、猛毒の鉱物を口にした少年。

 ゾクっとする。


 まさか、この症状、感染症じゃなくて毒なのか?

 あの少年なら毒ガス作ることさえ出来る気がする。


 方向違いの心配をしていたのか?

 僕は人為的に起こされた事件の方向で和木の症状を考えた。


 発疹が出るような毒。

「あとさ、なんか町中ニンニク臭すごうて。リオナも気持ち悪なってしもうて」

「ニンニク臭?」


 僕の記憶の中の毒の知識を洗い出す。

 ニンニク臭のする毒。


 第1次世界大戦中、ドイツ軍がベルギ-で初めて使用したと言われる毒ガス、マスタード。辛子とかニンニク臭がする毒ガスだった。


 僕は血の気が引いた。

 樫木君も、リオナも嗅いでしまった!?

 毒ガスの中、走らせてしまった!?


 成分は、硫化ジクロルジエチルで、農業開発の過程で偶然できてしまったものだ。

 呼吸障害と皮膚に炎症を起こす、熱はたぶんアレルギー反応だ。


「樫木君、リオナと一緒に今すぐ風呂に入ってきて! 水風呂でいいから。それから目と鼻と口と、全部流水で流して」

 僕は必死で叫ぶ。

 こういう指示って、僕の役目じゃないのに、命に関わるかもしれないと思うと、僕も性格くらい変えられるよ。


「これ、人為的な毒ガスだよ。和木君みたいな症状にならないように、急いで。で、戻ってきたら和木も水風呂に入れに行く。それから、外出る時はこれ!」

 僕は昨夜作った防護マスクを手渡した。

「でもなるべく今は外に出ないで」


 そういうと僕は和木の瞼を開いて目の充血を確認した。

 治療方法は除去しかない。

 薬とか、そんなんじゃ治らないんだ。

 次亜塩素酸で消毒するのが正攻法だけど、流水で洗い流しても効果はあるはずだった。


 キッチンハイターがない時代だけど、作ってやるよ、次亜塩素酸。

 次亜塩素酸風呂に和木をつけて、除去してやる、毒ガスを。


「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月10日

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