隔離するよ
気ままに投稿しています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
旅人が疫病を媒介する。
人の歴史を見たときに、人の流れが疫病を運び、人はそれと戦ってきた。
今の状況だと、旅人は僕達で、和木の病気のことを倭の国の人に公開しなければならない。
ーーでも。
現代社会でも、致死に至る病気を感染させた場合、人は病気を持込んだ人を責めている。
たとえ表面上では、仕方がないことだ。
差別はやめようなんて正義感を口にしても。
いざ自分が感染したら?
いざ自分の大切な人たちがそれで命を落としたら?
責められるのは、そいつを持込んできた人になる。
まして国が違えば、他国の責任にして、相手の国ごと当事者を追い詰めていく。
それじゃ、異世界ではどうなるんだ?
旅人は僕達で、僕達は神の氏族からこの倭の国に来た。
そして和木が、何らかの病気を発症している。
そしてもし、この状態を倭の国の民に言ってしまったら。
どうなる!?
頭を働かせろ、僕!
すごく大事な決断をしなければならない。
倭の国の医者を呼んだけど、それで正解だったのかな?
ここが日本だったら、すぐ救急指定病院に電話するんだけど、そんなことできないし。
この国で、和木の病気を公開しちゃって、大丈夫なんだろうか?
とりあえず、僕と和木以外の人の出入りを完全に遮断する。
感染症でなければ、セーフなんだ。
感染症だったとしても、僕と和木でストップすれば、これ以上拡散することはない。
そしてこの病気が何なのか、見定めんだ。
「和木君、しんどいと思うけどいくつか質問させて。いつから調子が悪かった? 症状はどんな感じ? 気がついたこと何でも言って。書き留めて病気を特定する」
それを医者に伝えて、この国でよいある病気なのかどうか、
治療法があるのかどうか、
ちゃんと確かめないといけなかった。
「微熱は続いてた?」
「いや……」
「症状が出たのは?」
「昨夜食事のあと」
「リンパは?」
「……腫れてる。インフルの時みたいに体の節が痛む……」
和木は僕の決意に気がついたのか、苦しそうに息をしながら、しっかり答えた。
意識混濁はしていないようだ。
汗がすごいから、着替えさせよう。
それから。
「和木君、発疹が広がってる。どれくらいなのか見るから、着替えてもらうよ」
「いらん。おまえも離れてた方がいい」
僕は呆れたようにため息をついて、和木の服を剥ぎ取っていった。
発疹が出ているのは首と顔、それから腕と、背中に少しだ。
抵抗しようとする和木は、いつもの勢いがない。
熱で弱っているので扱いやすかった。
「チーム異世界転生は……どうした!? おまえにうつったら、困る。全滅は、絶対阻止だろ?」
「樫木君を残してる。それから和木君、僕が今の症状だけ見て、僕が思いつく病気って、風疹とハシカなんだ。それだったら僕はもう抗体があるからうつらない。心配しないで」
風疹やハシカだったとしたら、僕は平気だ。
子供の時にかかったことがある病気だ。
「でもこの世界の人にとってはどうなのか、わからないから、しばらくここに隔離するからね」
「……ああ」
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月23日