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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
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守銭奴誕生

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

        ※


 気分よく飲んだ次の日は、天国から地獄へ急転落下するようなつらさだ。

 美味しいパスタにワインが進んで、完全に飲み過ぎてしまった。


 朝起きたときから頭がガンガンして、たぶんいくつかの脳細胞が死んだ気がする。


アルコールは脳の萎縮を早めてしまうことが分かっている。

大脳や小脳が委縮することで認知症が進むこともあるので、僕は酒を飲みながら小説を書く、マキちゃんによく苦言をもらしていた。


その僕が。

正直人並みなのは知力だけで、脳だけが頼りの僕が、昨夜は自制心を失ってしまった。

恐るべしアルコール。


同じくらいの量を飲んでいたはずの和木は、爽やかな顔をして調理場に向かったのに、それを追いかける僕の足はまだフラフラしている。


 情けない。

 僕は痛む頭を我慢して、調理場に向かった。


「おはよ」

「ああ。起きれたのか」

 何食わぬ顔で朝食の準備をする和木の横に並ぶ。

「卵、とってきてくれたんだ」

「ああ」


「おまえ、酒癖悪いな」

 何も言えない。

 おっしゃるとおりですよね、ほんと。


 初めて作った鉄で、フライパンを錬成したので、

このところ和木はそれでオムレツをつくることを楽しんでいる。


 バターも牛乳も豊富になるから、調理場は良い匂いが立ち込めていた。

「パンを焼くよ」

 僕はその横でオーブンにパンの種を入れて焼き始める。

 その後フルーツをむしって皿に盛るのが僕の仕事だった。


「なぁおまえ、昨日の事ちゃんと覚えてる?」

「へ?」


 なんだっけ。

 そういえばなんか重要な話をしてたような。


「あのメギツネ伯爵から直接受けたクエストだよ」

 僕は思い出すのに束の間の時間をもらった。


 そして自分がとんでもない約束をしてしまったことを思い出す。

『報酬は今日の5倍出す。低級精霊を操る魔物を狩ってきてくれ』

 わーー!

 思い出したよ。


「任してくらはい」

 和木が口笛を吹きながら、僕が言ったことを揶揄するように繰り返した。


「おまえ低級精霊ですら見えないのに、魔物なんて狩れるの?」

 僕の心臓が騒がしいぐらいバクバクいっている。

 ヤバい、ほんとヤバい!


 和木はふっと笑った。

「手伝ってやろうか?」

 わーー! 和木くん、神!

「樫木君にも今日頼んでみるよ。お願い、和木君手伝って!」

 一人じゃ絶対に無理なことだから。


「いいぜ。手伝ってやるよ。――ただし」

 そこまで言って和木の目が三日月のように細められる。

「その代わり今回の報酬の取り分は、俺が決めるな」


 わーー!

 神じゃなくて、守銭奴だった!


「オタクの青春は異世界転生」;2020年11月16日

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