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オタクの青春は異世界転生  作者: 一桃 亜季
105/144

酒の力だよっ!!

気ままに投稿しています。

お付き合いよろしくお願いします。

        ※


 リーインリーズはパスタの夕食に上機嫌だった。

「フォークを使って、巻き付けて口に入れてください」

 和木に言われたように、いいサイズに巻き付けて、美味いと言って口に運ぶ。

 大盛りで作った皿が、どんどん減っていくのは、見て明らかだった。


「疲れているところすまないが、おかわりを頼む。小麦をここまで変化させるとは、本当に大したものだ」

「いいですよ、すぐにお持ちしましょう。ただ飽きてはいけないので、先ほどとは違う味でお持ちしましょうね」

 和木はリーインリーズの胃袋を完全に掴んでいるようで、余裕たっぷりに微笑んでいる。


「新しい皿を持ってきたら、今夜はおまえたちも一緒に食べないか?」

 ほとんど、調理場の賄いで済ませていた僕達の夕食は、その提案により食卓で取ることになった。


「おまえ達は本当に私を感心させている。早く市民権を取るといい、そうすればそれなりの権威を与えてやる」

 リーインリーズ伯爵は、葡萄酒を片手に自分たちを褒め称えた。


 だが和木は正直、早く風呂に入って休みたそうに、うっとおしそうな眼で彼女を見ている。

 時折聞こえてくる舌打ちを横に、僕は小声で和木に言う。


「もうちょっと愛想良くして」

「酔っ払いにつき合わされるなんて、これが褒美か? 迷惑だ」

「大人の世界に入ったら、前の世界でも酔っ払い相手の上司を相手することだって、あったと思う。社会人なんだから、合わそうよ」

 僕の訴えを、嫌な顔をして睨んでくる。


「言っとくけどな、こんな酒飲みの席じゃ、ろくな話出てこないんだよ」

 やけくそになっているようで、和木は目が座るまで、久し振りの酒を煽っている。


「そうか、おまえ結構飲めるんだな。じゃあもっと飲め」

 リーインリーズは和木の飲みっぷりが気に入ったらしくて、さらにその量を勧めている。


 わっ、飲みくらべかな。

 大学入ったり、社会人になったら、上司から飲まされるって言うシチュエーションが、異世界でも体験できている。

 僕にも並々とそそがれる葡萄酒を、じっと見つめた。


 昼間火傷した傷も痛むんだけど、飲んじゃっていいのかな?

「リトウ、おまえはもっと飲んだ方がいい。痛みも吹っ飛ぶぞ」

 リーインリーズは豪快に笑って、僕の背中をばんばん叩いた。


 そっか。

 麻酔みたいなもんなんだ、この時代のアルコールは。

 変に納得して、僕は従う。

 ぐいっとグラスを傾けると、本当に結構いい気分になってきた。


「今日の活躍、すごかったな」

 少しだけ現実に幕がかかったような状態で、リーインリーズは更に自分たちを褒めていた。

「いやぁ、それほどでもないですよ」

 機嫌よく答えているのは自分自身だ。


「怖くはなかったのか?」

「はい、大丈夫でした」

 かなりビビっていたけれど、僕はアルコールのせいで気が大きくなっていた。

 その様子を見て、リーインリーズが少し口の端を上げたことに、僕は気付かない。


「じゃあさ、次のクエスト直接引き受けてくれない?」

「任してくださいよ!」


 この時ほど、僕は酒の力の暴走を知った瞬間はなかったと思う。

 慌てて和木が僕の口をふさごうとしたが、僕はテーブルにグラスをばんっと叩きつけて、「僕に任せてくれればぁ」と舌っ足らずに安請け合いしていた。


「じゃあ、次のクエストは低級精霊を生み出す魔物、狩ってきてもらおうか」

「任せてくらはい」

 和木の腕が僕の首に回されて、ぎゅうぎゅうに締め上げられる。

 けれど僕はその時、なんでもできる気分になっていた。


 チャレンジしたらその先が見えるよね?

「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月15日


感想、評価いただけると嬉しいです。

そろそろ文庫本一冊くらいになってきたので、終止符打つかもしれませんので、参考にさせてください。

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