未来のために勝負しようよ
気ままに投稿しています、
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ねぇ、姉ちゃん。
あいつらは過去しか背負っていけないの?
未来の可能性、持っていけないのかな?
コウの提案で、アイとコウは今山梨県に向かって、新幹線に乗り込んでいる。
窓側にすわって外を眺めているコウの横顔は真剣だ。
高野山から戻ってすぐに支度して、家を出たから、日はどっぷりと暮れている。
窓ガラスに映ったコウの顔をチラチラ見ながら、コウの意見を承諾しながらも、アイは不安になっていた。
それはコウが一人だということだ。
山梨第一に向かって、勝負するはずだったチームと、勝負したい。
それは前向きでいい。
でも生き残ったチームメンバーに声をかけても、誰一人コウに賛同してくれる人がいなかった。
主力メンバーがほとんど亡くなってしまい、バスケ部はもう機能していない。
誰か一人でも、一緒に行くと言ってくれていたら、どれだけコウが救われたかしれないのに。
アイはぎゅっと目をつぶった。
練習試合の申し込みすら、部活の顧問に断られた。
そんな状態でも、コウの心は急いでいる。
たった一人でも、和木、森、樫木三人との、失われた未来を再現しようとしている。
自分の想像していた以上に、コウは強くて。
だからこそ、万が一それが折れてしまった時が怖い。
自分の心配を知ってか知らずか、コウは切なくなるような微笑みを見せた。
「姉ちゃん、明日ちゃんと見てて。インハイ、ううん未来にリベンジするから、ちゃんと記録して」
「オタクの青春は異世界転生」:2020年11月14日